「らーめん予備校」制度の立ち上げも
さらに、酒田市の「酒田ラーメン」は2023年に全国規模で行われた「「第1回日本ご当地ラーメン総選挙」」で日本一に輝いた。これらの事例は、地元で愛される日常の味が、戦略的な発信によって一躍全国区になりうることを示している。
こうした山形の事例を踏まえると、ラーメンが地域振興に生きる可能性は全国に広がっていることがわかる。
栃木県佐野市は「佐野ラーメン」でよく知られるが、近年は人口減少や高齢化が続いており、老舗の廃業が相次ぐ課題を抱えていた。そこで市は「佐野らーめん予備校」というユニークな制度を立ち上げ、移住者や起業希望者に対してラーメン店の開業ノウハウを提供する取り組みを始めた。
市内のベテラン職人が講師となり、仕込みから経営までを実地で学べるプログラムが整備されている。これによって新店が次々オープンし、移住者も増えるという成果を生んだ。ラーメンを単なる観光資源としてではなく、町の未来を支える「仕事」と「暮らし」を補強する手段に昇華させた点で、佐野市の取り組みは極めて先進的といえるだろう。
さらに、新潟市の取り組みも注目に値する。新潟市は古くから「新潟五大ラーメン」と呼ばれる地域密着のご当地ラーメンを展開しており、長岡生姜醤油、あっさり醤油、濃厚味噌、燕三条系背脂煮干、三条カレーラーメンといった多彩な系譜を誇ってきた。
新潟ラーメンが全国的に知られるようになった背景には、地元発の人気店の東京進出が早かった点にあるだろう。燕三条系の「らーめん潤」は2005年に東京・蒲田に進出し、一躍話題となった。
その背中を追うように「我武者羅」なども東京で新潟ラーメンを打ち出し、新潟ラーメンの存在感を全国区へと押し上げていった。行政の観光戦略と、先駆的店舗の挑戦が両輪となって新潟のラーメン文化を広げてきたことは、注目に値する。