参入ハードルが低いライブ配信に流行は移りつつある

「流行の最先端はショート動画とライブ配信ですよね」と27歳のマーケティング職の女性は語る。

「最近ではYouTubeの長尺動画よりも、ショート動画やライブ配信が流行っていますよね。TikTokやSHOWROOMなどのライブ配信アプリの流行で、一般人でも芸能人みたいな配信ができるようになっているように感じます。わざわざ企画をイチから考えるYouTuberと違って、『ダンスを覚えること』や『コスプレ衣装を買うこと』は簡単じゃないですか。

あと今はただ動画を出すという一方通行のコミュニケーションよりも、視聴者とコメントを通じて会話をするという双方向性のコミュニケーションが求められているように思うし、ライブ配信などの方がYouTuberより参入のハードルが低くなっているので、流行も移りつつあるのかもしれないですね」

ハチ公前で取材に答える20代女性(撮影/集英社オンライン)
ハチ公前で取材に答える20代女性(撮影/集英社オンライン)

しかし、ハードルの低さゆえの危険も存在すると女性は続ける。

「私の友人は会社に内緒で配信業をやっているのですが、変なコメントも多いと聞きますよ。高額の有料ギフトを送って来た方が配信を終えた後にDMで「(直接)会えないか」と送ってきたこともあるそうです。

ただ現在、毎月平均で20万円そこそこ配信だけで稼げているそうなので、変なリスナーにも我慢していると言っていました。でも、実際ライバーの方がリスナーに殺される事件も起きているじゃないですか。なので私としてはちょっと心配している部分もあります」

渋谷の街に掲げられたライブ配信アプリの広告(撮影/集英社オンライン)
渋谷の街に掲げられたライブ配信アプリの広告(撮影/集英社オンライン)

アパレルショップで働く24歳の女性も顔を出しての配信ということに危機感を覚えている。

「私の働いている店でもシーズンごとに新作が出ると、お客様に紹介するためにお店のアカウントでライブ配信をやるんです。女性向けのお店なんですが、他の店舗で以前そのライブに男性らしき名前のリスナーが『似合ってるね』とか『かわいい』みたいなコメントを飛ばしてくることがあったそうです。

本人は『配信者でもないのに変なファンがついたのかな』なんて気にも留めていない様子で言っていましたが、私は怖いなって思いましたよ。やっぱり一般人とはいえ、世間に顔をさらすことってリスクもあるなと」

写真はイメージです(写真/Shutterstock)
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そして、「YouTuberなどの動画投稿者」の代わりに男子中学生がなりたい職業の1位になったのは、公務員だ。25歳の男性は家族から以下のように言われたという。

「現在転職活動中なのですが、お盆に帰省した時に祖父から『公務員試験を受けろ』と何度も言われました。『カレンダー通りの休みで給料も安定しているし、普通に働いていたらクビになることもないから』って。両親も地元の市役所で働いているんですが、『安定してるしいいと思うけどね』と言っていました。両親や祖父母の世代には、公務員は給料面も労働時間も休暇も安定した素晴らしい仕事という認識が根強くあるんでしょうね」

自己発信のリスクと生活の安定性の観点から、今の社会で“好きなことで、生きていく”ことが難しくなっていることを子どもたちは敏感に感じとっているのかもしれない。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班