女性だからこその苦悩
――やはり、現場はまだ男性が多いと思います。女性として働いていて、大変なことはありますか?
現場に建てられる仮設トイレは男女兼用なのでなるべく使わないようにしています。そういう細かいところで不便さを感じることもありますね。
それからやはり、どうしても男性との筋力の差は実感します。それでも自分のペースで頑張りながら「いつか1人でも作業がこなせるようになりたい」とは常に思っています。
――逆に「女性だからこそ頼られた」と感じる場面や、いままでの経験が役立ったことはありますか?
「女性だから」という理由で特別に頼られることはあまりありませんが、たとえば、「糸ある?」と現場で聞かれたときに、「炭壺(木材などに直線を引く道具)で代用してみては?」と提案したら、それが意外とハマって。そのときは「おっ、なるほどね!」と言ってもらえました。
それから大学で学んだ建築知識は、入社当初大いに助けになりましたし、飲食店のキッチンアルバイト経験も役立っていますね。例えば“3口コンロでオムライスを作りながらパスタをゆでてソースを温める”というような、複数の作業を同時にこなすような効率重視の動きは、現場でも求められるスキルなんです。
限られた時間で、限られたスペースのなかでどう動くか。そういう感覚は、現場での作業や段取りを組むときにもすごく活かされていると思います。
――将来の目標や、これから挑戦したいことはありますか?
一番の目標は、自分の家を自分の手で建てること。自分にとっていちばん暮らしやすい「理想郷」をつくってみたいです。
今はまだ親方について学ばせてもらっている段階ですが、親方ごとに進め方も違うので、いろんなやり方を吸収しながら、自分なりのスタイルを見つけていきたい。そしていつか、自分の現場で、自分のやり方で、一から家を建ててみたいですね。
――これから大工や建設業を目指す方に、メッセージがあればお願いします。
最初は不安もあると思うけど、気負わずに飛び込んでみてほしいです。私に大工を教えてくれた親方は「やってみてなんぼ」というタイプだったんですが、その考え方があったからこそ、私は大工を続けられているんだと思います。
うまくいかないこともあるけど、やってみないとわからない。少しでも「やってみたい」って思ったら、思い切って一歩踏み出してみてください。
岡庭建設株式会社 公式サイト
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取材・文/逢ヶ瀬十吾(A4studio)