問い詰める代わりにやるべきこと

配偶者だってバカじゃない(まあ、不倫している時点でバカなんだけど)。不倫が不法行為にあたること自体は認識していて、自身がやましいことをしている自覚を持ちながら不倫をしている。

そのうえで配偶者から問い詰められようものなら、警戒心はさらに強まり、探偵が調査で証拠をつかむ難易度が一気に上がってしまう。

まずは不倫の証拠を押さえるべし!

ところで、ドラマやアニメの探偵モノの尾行で、周りをキョロキョロと警戒している対象者が急に後ろを振り返って、探偵がその瞬間に電柱に身を隠して華麗に警戒行動をかわしながら、カッコよく最後まで追いきる――みたいなシーンがあるじゃないですか? でもあれって、完全にフィクションの世界の話なんですよ。

現実の世界では、警戒行動をしている対象者を尾行することは至難の業。浮気調査をスタートした段階で、すでに対象者が「配偶者に不倫を疑われてしまっているから、もしかしたら自分が探偵に尾行される可能性があるかもしれない」といった具合に日常的に警戒していたら、どんなベテラン探偵でも尾行することは、ほぼ不可能。

画像はイメージです(写真/Shutterstock)
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ちなみに僕は、過去に10秒に1回後ろを振り向く警戒レベルMAXの対象者の尾行をしたことがあるけど、もはや「だるまさんがころんだ」状態で完全に無理ゲーだった。

探偵の尾行というのは減点方式であって、尾行がうまい探偵とは、「対象者の警戒をゼロの状態に保ち続けるのがうまい」ことと同義。だから、ひとたび配偶者に警戒心を抱かせてしまったら、不倫の証拠をつかむ可能性は一気に下がってしまうことになる。

問い詰めたとき、相手が全面降伏してくれないかぎり、一気に劣勢となってしまう――というわけ。

まあ、浮気されている側が劣勢というのもおかしな話なんだけど、悲しいかな、現代日本の民法においては、配偶者の不倫を証明するには、不倫をされた側が証拠を揃えて立証する必要がある。

だから、日本の裁判実務においては、証拠が有るか無いかで、不貞があった、なかったの認定が変わってくる。極端な話、実際には不貞行為があったとしても、その証拠が提出されなければ、調停や裁判などでは不倫の事実は認められず、不倫された側が泣き寝入りするしかないのが現状だ。

てか、誰だよ、こんな法律つくった奴……出てこいよ、どうせ不倫してるオッサンだろ。

まあとにかく、配偶者を問い詰めるなら、まずは不倫の証拠を押さえること。そして、配偶者に悟られることなく、水面下で証拠を集めることが何より大事。まずは、これを頭にきっちりと刻み込んでおいてほしい。いつか来るかもしれない、絶望の瞬間に備えるために……。

文/探偵小沢

『事件はラブホで起きている 秘密の「浮気」調査報告書』二見書房
探偵小沢
探偵小沢『事件はラブホで起きている 秘密の「浮気」調査報告書』二見書房
2025/7/2
1760円(税込)
320ページ
ISBN: 978-4576250533
「他人のセックスを証明することで生活をしている社会不適合者」をキャッチコピーに新卒から探偵となった現役私立探偵「探偵小沢」。小学生の頃の趣味は「買い物をする友だちのお母さんの尾行」というように、ナチュラルボーンな探偵。手がけた浮気調査は1000件以上。見かけとは裏腹に、丁寧な調査と依頼者さんに寄り添ったホスピタリティの高さが評判を呼び、日々調査依頼が舞い込む超売れっ子探偵。 そんな探偵小沢が遭遇した数々の浮気調査現場のレポートから、「もしパートーナーが浮気した場合の対処法」「悪徳探偵の見分け方」「探偵のと~っても有効な使い方」「弁護士の相談方法」など、「浮気」というキーワードに「ピン」とくる世の皆様方には必携の書。
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