ただ株を持ち続けた場合よりも良い結果に
この戦略を、NASDAQというアメリカの代表的な株価指数で検証したところ、ただ株を持ち続けた場合よりも良い結果になった。どれだけ安定して利益を出せたかを見る「Sharpe比率」は0.88で、持ちっぱなしの0.79より高かった。下落の不安定さをおさえたかを見る「Sortino比率」も1.06で、通常の1.02を上回った。
大きな損を避けながら利益を出せたかを示す「Calmar比率」も0.52と、比較対象の0.45より良かった。つまり、価格のブレをおさえつつ、より効率的に利益を得られたということになる。
プロが行ってきた作業は簡単に再現できる
同じことが、Finder社のChatGPTファンドでも起きていた。38銘柄の選び方も、「儲かる株を教えて」といった単純な質問ではなかった。
「負債が少ない」「過去に成長している」「競争力のある会社」といった条件をあらかじめ与え、その条件に合った会社を選ばせた。AIが独自に判断したのではなく、人間がルールを作り、AIがそれをもとに処理した形である。
つまり、AIに正しく指示を出せば、プロが行ってきた作業を簡単に再現できるということになる。
ChatGPTが優れていたのは、銘柄の中身よりも、選定方法と構成の安定性にあった。選ばれた企業は、どれも世界的に有名な大企業だったが、重要だったのは、これらをどう組み合わせたか、どんなルールで並べたかだった。
1つ1つの銘柄に大きな期待をかけるのではなく、分散して同じ重みで持つという考え方が、安定した成果をもたらしたのだ。
あいまいに聞けば、一般的な答えしか返ってこない
このような使い方をすれば、ChatGPTは「判断の補助役」として大いに役立つ。逆に「おすすめを教えて」とあいまいに聞けば、一般的な答えしか返ってこない。使い方ひとつで、成果が大きく変わる。
投資はリスクがある。AIを使えば絶対に儲かるという話ではない。ChatGPTが選んだ銘柄も、今後ずっと上がるとは限らない。
だが、工夫次第で人間の力を拡張し、よりよい判断を助ける力にはなってきている。難しい分析を肩代わりしてもらいながら、自分の投資判断に活かす。そうした使い方が、これからの時代には現実的な選択肢になる。
文/小倉健一
※1
ChatGPT stock picks vs 10 popular funds(ChatGPTの株式推奨銘柄 vs 10の人気ファンド)
https://www.finder.com/uk/share-trading/share-trading-research/ai-investing
※2
Using ChatGPT to Generate NLP-Driven Investment Strategies(ChatGPTを活用して自然言語処理(NLP)に基づく投資戦略を生成する)
https://blogs.cfainstitute.org/investor/2025/01/07/using-chatgpt-to-generate-nlp-driven-investment-strategies/