完全に違法でも摘発が難しい理由

「今は他の街に住んでいますが、もともと商工会関係の真面目に営業している方々や、屋台を家業にしている友人など、真剣にやってる人たちを知っているので……。一部の詐欺まがいの業者のせいで『屋台なんてそんなもん』と思われてしまうのは、本当に悔しかったですね」と投稿者は胸の内を語った。

では、実際に「仙台牛タン」と表記して豚タンを提供する行為は、法的にどう評価されるのか。

ゆら総合法律事務所の弁護士・阿部由羅氏に聞いた。

「実際には豚タンを販売しているのに『牛タン』と表記することは、商品の品質や内容について客の誤認を引き起こし得るものです。不正競争防止法違反に当たる可能性が高く、行為者は『5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金』に処されるおそれがあります」

実際に提供された「豚タン」
実際に提供された「豚タン」
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阿部氏によれば、これは「優良誤認表示」と呼ばれ、景品表示法の観点からも問題がある可能性が高いという。消費者庁からの措置命令や課徴金、刑事罰の対象になることもある。

特に注目すべきは、「一般の客がどう受け取るか」が判断基準になるという点だ。中には「店名が『仙台牛タン』というだけで、その商品を売っているとは限らない」といった反論も見られたが、法的には通用しない可能性が高い。

「たとえば店名に『牛タン』と入っていて、売っている商品が一種類しかなければ、一般の客はそれを牛タンだと思うのが自然です。『牛タンは店名にすぎない』という言い分は、こうした判断基準からは通用しません」

とはいえ、こうした「臨時営業」の屋台に対して法的措置を取るのは、実際には非常に難しいのが現実だ。

「屋台営業の場合、運営者の素性が不明なケースや、不当表示をしていた証拠が十分に残らないケースが多くあります。仮に常設店舗で同様のことをすれば、すぐに摘発される可能性が高いでしょう。だからこそ、屋台という形態を利用し、摘発を逃れようとする意図があるのかもしれません」

真面目に営業している業者にとって、こうした“詐欺まがいの屋台”の存在は大きな迷惑だ。

一部の悪質な出店が、「屋台=信用できない」というイメージを広げてしまう。特に食品アレルギーは命にもかかわることなので、今後は、運営体制の見直しなど、主催者側の厳しい監視の目も必要になってくることだろう。

取材・文/集英社オンライン編集部