​​「タイの大麻カルチャー」は終わったのか?​ 

現地のタイ人の言葉にもあったように、大麻をめぐる制度はたしかに“後戻り”しているようにも映る。だが、筆者の見解では、それがただちに「文化の終焉」を意味するとは限らないと思える。

​今、タイで起きているのは「グラデーションの変化」だ。規制と現場のねじれ、制度と感覚の乖離、そこに宿るのは、社会が“成熟するための過渡期”なのかもしれない。​

​​日本の“麻文化”同様に、タイと大麻は切っても切れない深い関係にある。そもそも、タイは古くから民間療法や伝統医療で大麻が使用されてきた国だ。大麻を喫煙する際に利用される水パイプ「ボング」もタイ語が由来だというのは広く知られた話だろう。

​​大麻喫煙用の水パイプ「ボング」​
​​大麻喫煙用の水パイプ「ボング」​
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​​大麻を推奨することが本記事の趣旨ではないが、日本ではいまだに「大麻=悪」と単純に捉えられることが多い。だが、“合法国”タイの現場には、「大麻=悪」とする単純な善悪の枠組みでは捉えきれない、多様な現実があるのだ。​

#2 に続く

※なお日本では大麻の所持および使用は禁止となっている。詳しくは外務省ホームぺージ「タイの大麻に関する規制緩和(注意喚起)」を参照。

取材・文・写真/伊藤良二​