県は「懲戒免職にする事案ではなく、刑事告訴もしない」

いっぽう県は、斎藤知事の指示があったかなかったかを「断定できる判断材料はない」として、知事の責任問題に触れることを回避。

同時に、井ノ本氏は「知事に指示されたと信じており、県議らへの漏えいも口頭で、文書を渡したわけではない」などとして懲戒免職にする事案ではなく、刑事告訴もしないと発表した。

「小橋元理事の証言があるにもかかわらず指示があったとは断定できないとして知事の責任を問うことをせず、同時に、確認できないとする知事の指示を“信じた”という理由で井ノ本氏を厳罰にせず、指示の有無を捜査で解明してもらうために刑事告訴もしないというのが、県の処分内容です」(地元記者)

井ノ本氏が3人の県議に私的文書の内容を吹聴していた昨年4月ごろ、斎藤知事や側近らは、告発内容の真偽を調べようとする動きが強まるのを恐れ、これを抑え込むのに躍起だった。

「片山副知事は県議会に対し調査特別委員会(百条委)の設置を強く反対していましたが、結局百条委は設置され、片山氏は辞職しました」(県関係者)

昨年7月19日、兵庫県議会百条委に出席した当時委員の増山誠(左)、岸口実の両県議(撮影/集英社オンライン)
昨年7月19日、兵庫県議会百条委に出席した当時委員の増山誠(左)、岸口実の両県議(撮影/集英社オンライン)

だが、この百条委でも、当時兵庫維新の会に属した委員会メンバーの岸口実、増山誠両県議(現在は維新会派を離脱)が私的文書の公開を強く求めた。そのさなかの昨年7月7日にAさんは「一死をもって抗議する」との遺書を残し自死とみられる急死を遂げている。

「この私的文書が拡散していくことにAさんは苦しんでいました」とAさんの知人は話す。指摘文書の内容はその後も、NHK党の立花孝志党首がSNSで拡散させた。

兵庫県は5月27日になって、XとYouTubeに対し、Aさんの私的文書が載った立花氏のポストや動画の削除を求めたとようやく表明し、Aさんや遺族に謝罪すると表明した。

だが、漏えいの“原点”ともいえる井ノ本氏の行為がなぜ行なわれたのか、全容は見えないままだ。

元西播磨県民局長・Aさんが出した告発文書(撮影/集英社オンライン)
元西播磨県民局長・Aさんが出した告発文書(撮影/集英社オンライン)
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班