40代は「再起動」
俺は40歳になって10年やってきたソロのバンドメンバーを変更した。
10年ひと区切り。30代の自分を一度リセットしたかったのかもしれない。
30代はさんざんアウトプットをしてきたから、その分、確実に経験値は上がっている。
だから30代より進歩した自分を実感しながら、「あのときの仕事のやり方は正解だったのか」「いまならもっといいものが作れるんじゃないか」と振り返れるのも40代の楽しみになる。30代の自分の「エラーチェック」みたいな作業をやっていくと、いまの立ち位置も見えてくる。
俺の場合、40代はユニコーンの再始動があった。これは30代のときにはとうてい考えられなかったことだけど、「いまならできる」と思ったのを覚えている。
いままで自分がやってきたことを振り返りつつ、自分を再起動できるのも40代の醍醐味。俺がユニコーンをまた続けられると思ったのも、自分を再起動して生まれた「空きメモリ」に、ちょうど収まるピースを見つけられたからかもしれない。
50代は「最適化」
50歳になると「体力との勝負」になってくる。
50代は経験値は高いけど、手を動かす力は20代の半分くらいと思った方がいい。
仕事も「これは疲れるからやめよう」など、取捨選択するようになる。でも50代なんてそう過ごすべきだと俺は思う。
経験値が上がってできることがたくさん増えても、無理をすると病気になるから、「いまさらベテランがそんなに仕事するかよ」という空気を出しつつ、なるべく仕事は楽な方向に持っていきたい。
仕事を取捨選択するときのポイントは事前に持っておくと迷わない。
俺の場合は「若いときは忙しくてできなかったけど、本当に好きなことをする」と決めている。
いまYouTubeの企画でやっている「トツゲキ!オートモビレ」(専用車で屋外レコーディングをするプロジェクト)なんかもそう。昔は楽しみながら外で自由にレコーディングをすることなんてできなかった。
あと「自分より得意な人がいることはやらない」っていうのも決めている。
若いときは「苦手なものは克服したい」「できるようになりたい」と思っていたけど、50代になったらそれは「得意な人に任せればいい」と思えるようになってきた。
昔は俺だって「できませんって言ったら負け」みたいなところはあったけど、50代になったら勇気を持って「できません」でいいと思う。
これはあきらめとは少し違って、50代はあえて「できません」「それはあなたに譲ります」でいいんじゃないかと思っている。
50代はそんな感じでいろんなものを選びながら、自分自身を「最適化」するのがいいと思う。
でも俺の場合はまだ忙しすぎて、自分の思う最適化はできていない。
文/奥田民生