「守護神補強」は死屍累々…… 

巨人の「守護神補強」はクルーンのような成功例もあったが、失敗例のほうが圧倒的に多い。もっとも有名な例は、2005年に来日したダン・ミセリだろう。

MLB通算579登板、35セーブの実績を引っ提げ、本人は「50セーブを目指す」とコメント。ところが、春先から状態が上がらず、開幕戦からいきなり救援失敗。

対戦相手スタンドから「ミセリコール」が沸き起こり、4試合の登板で0勝2敗、防御率23.63。最終的には2軍落ちを拒否し、4月19日に退団。家族と浅草観光をした後に帰国した。

対戦相手スタンドからコールも沸き起こったミセリ(写真/共同通信社)
対戦相手スタンドからコールも沸き起こったミセリ(写真/共同通信社)

ほかにもダイエー時代に通算117セーブを挙げたロドニー・ペドラザ(2003年)も巨人では0セーブ、防御率12.00。ロッテでリリーフとして活躍し、抑えとして見込まれたブライアン・シコースキー(2004~2005年)も、クローザーとしては5セーブと見切りをつけられている。

日本人登録の投手にしても、他球団でクローザー実績のある金石昭人(1998年)、河本育之(2000~2004年)、豊田清(2006~2010年)、MICHEAL(2009~2011年)、小林雅英(2010年)らを獲得。

だが、いずれも選手としての峠を越えており、前所属での成績を超えられなかった。

その点、マルティネスはまだ29歳と若く、今季も最高の滑り出しを見せている。現時点では衰えは見られないが、その一方で、中日時代に通算303試合に登板した疲労は少しずつ蓄積されているはず。手放しに「安泰」とは言えないだろう。

 ダブルクローザー案もある⁉

巨人ではクローザーが短命に終わっている経緯を踏まえ、マルティネスと大勢の「ダブルクローザー」も選択肢に入れてはどうか。大勢には「人気球団の守護神」という重責をルーキーイヤーから担ってきた経験と実績がある。

大勢、マルティネスともに登板間隔を空けることで年間通しての消耗を抑え、少しでも選手寿命を延ばす案だ。

巨人での実例は少ないが、1985年の阪神(中西清起19セーブ/山本和行11セーブ)、1990年の西武(鹿取義隆24セーブ/潮崎哲也8セーブ)1995年のロッテ(成本年秀19セーブ/河本育之10セーブ)、1997年のヤクルト(伊藤智仁19セーブ/高津臣吾7セーブ)、2011年の中日(岩瀬仁紀37セーブ/浅尾拓也10セーブ)などの例がある。

今季の巨人も、マルティネスは縦の角度、大勢は横の角度と個性が異なるだけに、状況次第では、ダブルクローザーも面白そうだ。

ちなみに過去3年、大勢は阪神戦に通算防御率5.68と相性が悪かったが、今季はここまで阪神戦に3回登板し、ランナーを一人も許さない圧巻の内容を見せている。

もちろん今後、マルティネスや大勢が不動の守護神として新たな歴史を刻む可能性も十分にある。シーズンが進むなかで彼らがどんな投球を見せてくれるのか、目が離せない。

取材・文/菊地高弘

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