最高の結果で締めくくったU23ラストステージ

「僕にとって、これが最後のアンダーの大会。最高の結果を残して、金メダルを持ち帰ってきたいと思います」

男子U23世界選手権を直前に控えた強化合宿のインタビューで、鳥海は強い意気込みを見せていた。彼のほか、赤石竜我、髙柗義伸と、東京2020パラリンピックの銀メダリスト3人を擁した男子U23日本代表は、優勝を目標にして、22年9月、タイ・プーケットに乗り込んだ。

初戦でトルコに逆転勝利して白星発進した日本は、その後も連勝街道をひた走ったが、予選リーグの最後に高い壁が立ちはだかった。優勝候補の一角に挙げられていたスペインだった。

複数のビッグマンを擁する相手に、1Qから2ケタ差をつけられた日本は、52-71と完敗に終わった。その結果、日本、スペイン、トルコが4勝1敗で並ぶ三つ巴となり、得失点差で日本は3位で決勝トーナメントに進出した。

準々決勝でイスラエルに64-43で快勝した日本は、準決勝で再びスペインとの大一番を迎えた。結果は、53-51で日本が勝利。「ディフェンスで勝つことができた」と鳥海が語ったように、試合序盤から日本のディフェンスが機能。最後も2点リードで迎えた残り10秒の場面でコンタクトの強いディフェンスから相手のミスを誘い、わずかな差を死守して勝利を収めた。

試合後、チームはセンターサークルで円陣を組み、「明日の決勝は絶対に(勝利を)取りに行くぞ!」という京谷HCの声に「オッケー!」と全員で応えた。

「イチ・ニ・サン、ニッポン!」の掛け声で締めると、スペインにリベンジを果たし、明日は金メダルをつかむんだ、という高ぶる気持ちを抑えきれなかったのだろう。鳥海は天井を見上げながら、一人、雄たけびをあげた。

そんなエースの燃え滾る姿に、チームメイトたちも拍手や拳を突き上げて応えた。

[2022年U23世界選手権 ]気持ちを前面に押し出して戦い、有言実行の金メダルを手にした(写真:X-1)
[2022年U23世界選手権 ]気持ちを前面に押し出して戦い、有言実行の金メダルを手にした(写真:X-1)

事実上の決勝戦となったスペインとの死闘を制した日本の勢いは止まらず、決勝もトルコに52-47で勝利し、優勝。日本車いすバスケットボール界にとって史上初の金メダル獲得の瞬間、鳥海は親友でもある髙柗の胸に飛び込むようにして、喜びを分かち合った。

そして表彰式後には、リングの上によじ登り、チャンピオンだけが許される“ネットカット”をした。そこには、ふだんメディアの前で見せるクールなイメージとはまったく違う、まるで少年に戻ったように無邪気な笑顔を見せる素の「鳥海連志」がいた。

[2022年U23世界選手権]チームを代表してネットカットした鳥海。少年のような笑顔がはじけた(写真:X-1)
[2022年U23世界選手権]チームを代表してネットカットした鳥海。少年のような笑顔がはじけた(写真:X-1)