「1人ずつ今日殺していく」と言いながら、持ち出した日本刀で

本多被告は法廷で、こうしたBさんの訴えについて、〈身体の接触はなく、性的な行為はしていない〉と主張し、犯行を否定。しかし、裁判長は〈供述内容はそもそもあいまい〉なもので、〈被告人の供述は信用できない〉と断じた上で、本多被告のわいせつ行為を認めた。

第2の事件で問われたのは、2022年2月11日の早朝の出来事だ。本多被告からの呼び出しを受け、午前5時前に本多被告の自宅にやってきたのは、〈当時35歳〉になるCさんと、〈当時31歳〉のDさん、〈当時27歳〉のEさん、〈当時26歳〉のFさん、〈当時27歳〉のGさん。いずれも本多被告がオーナーを務めるペットショップの店長や従業員だ。

本多被告は、そのうちのCさんに対し、〈顔面を拳で2回殴り〉〈左肩を1回蹴る〉暴行を加えた。さらに、「裏切り者は殺す」と告げた上で、手に持った日本刀を鞘から抜き、Cさんらの近くで〈刀身を振り下ろす〉などする〈凶器を示して脅迫〉したという。

その後、自身が社長に据えたHさん〈当時38歳〉に対して〈顔面を手のひらで1回たたく暴行〉を加えてもいる。

福岡地裁(AC)
福岡地裁(AC)

判決文では、公判でCさんらが法廷で証言した内容にも触れている。その証言によると、本多被告は犯行時、Cさんらを正座させた上で、「この中に裏切り者がいる」「1人ずつ今日殺していく」と言いながら、持ち出した日本刀で〈素振りしていた〉という。

この事件についても、本多被告は犯行を否認。〈「裏切り者」とも「殺す」とも発言していないし、真剣の日本刀を素振りしていたが、それは手持ち無沙汰であり、屋外が寒く、身体を動かしたかったため〉と釈明している。

しかし、裁判長は第1事件と同様に〈供述はあいまい〉などとして本多被告の主張を退け、犯行事実を認定している。

〈反省の態度は全くうかがわれない〉

第3の事件も、第1の事件と同様、本多被告の自宅での「糸島勤務」の最中に起きた。

2022年2月19日午前9時ごろ、「糸島勤務」のためにやってきた〈当時22歳〉の女性Aさんに対し、本多被告は〈正面から抱き付き、その両乳房に着衣の上から自己の顔面を擦り付け、その乳房を着衣の上からもむ〉などの性的暴行に及んだ。

本多被告の犯行はさらにエスカレートし、Aさんのズボンを引き下げて尻を触るなどのわいせつ行為に及んだという。

Aさんは被害に遭った後も〈夢であった動物に関わる仕事をたやすく辞めたくない〉と考え、〈ペットショップへの出勤を10日近く〉続けたが、本多被告から旅行に同行するよう求めるLINEメッセージを受けたことで、父親らに被害を相談。警察に被害を申告するに至ったのだという。

本多被告が経営していたペット店のSNSのアイコン
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裁判長は本多被告の犯行を〈複数の場面にまたがる相当に執拗なもの〉と指摘し、〈許可はとっていた〉〈嫌がっていなかった〉などとする本多被告の身勝手な弁明を一蹴した。

その上で、〈人の多く集まる場所に行きにくくなり、年長の男性への接客に伴う仕事にも就きにくくなるなど、生活に支障が生じている〉とAさんが心身に受けた被害の実情にも触れている。

これら三つの事件のいずれでも本多被告の犯罪事実を認定した裁判長は、判決文の末尾で本多被告の〈反省状況〉についてこう残している。

〈不合理な弁解に終始して事実を否認しており、反省の態度は全くうかがわれない〉

多くの被害者にトラウマを植え付けた「性獣」にまもなく裁きが下る。  

取材・文/集英社オンラインニュース班

                                

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