行為を終えた後のカップルの生々しい会話
平野さんの好きな“うんスポ”は、この新校舎の2階。そっと階段をのぼっていったところで、“キュイッキュイッ”と、遠くから机が床にこすれるような音がしてきた。「守衛さんが机を整理しているのだろう」とはじめは思ったが、音は均等なリズムでキュイキュイとずっと鳴り続けている。
このとき、平野さんの頭の中には別の可能性が浮かびはじめていた。そして気が付くと、トイレを通り越し、音のする教室へと足を運んでいた。
「案の定というか、机に手をつき、バックの態勢で男女が激しく行為をしていたのです。暗くてよく見えませんでしたが、こすれる机と床の音と、押し殺すような息遣いが、静かな校舎の中でハッキリと響いていました。
私はというと、好奇心はあったけど、気まずさと、もし向こうにバレたら申し訳ないなという思いで、3分くらい見ていたのち、近くの部屋に身を隠しました。ちなみにあまりの衝撃で、すっかり便意はひっこんでいました」
行為が終わった後、部屋からは「やば」「マジでやっちゃったね」「これ絶対に人に言えないわー」「明日、この席に座る人に申し訳ない」など、のんきな会話の声が聞こえてきたという。
「二人の顔がちゃんと見たくなった私は、ものすごい遠回りしながら急いで先回りして、このカップルとキャンパス内の駐輪場で正面からすれ違うことに成功しました。男女ともに普通な感じで、多分、1コか2コ上の先輩。まったく知らない人だったのは少しがっかりでした。
ですが、つい数分前まで校舎内でとんでもないことをやっていたクセに、私の前で『あー、課題疲れたなー』みたいな、すまし顔をしていたのがすごく印象に残っています。まあ私もこのあと、再び“うんスポ”に行ってすばやく用をすませ、“ちょっと夜風にあたっていました”みたいなすまし顔で工房に戻っていったのですが」
平野さんの大学では、実家暮らしのカップル同士が、お金を節約するために校舎でしていることがたまにあるという。ただ、平野さんが目撃したのは、これが最初で最後だったようだ。
本人たちはバレていないつもりかもしれないが、実はばっちりと他人に見られていることもある。そういった意味でも、絶対に外でやるのはやめておこう。
取材・文/集英社オンライン編集部