「こんな貧乏旅はもうしたくない!」

これぞ私たちが目指した貧乏旅。

だからこそ、1日目までは楽しかった、楽しかったんだけど……。2日目の夜には急に全部がイヤになっちゃってね。

「私、芸能界で頑張っているのに。お金だって結構貯まってるのに。こんな貧乏旅はもうしたくない!」と、2人を連れて高層階のルーフトップバーへ。

しかし、その店が想像以上にちゃんとしていて。

サンダルを履いていた友人には踵(かかと)のある靴が貸し出され、エレベーターの扉が開くと、目の前には驚くほどの綺麗な夜景と、響き渡る生演奏が。

さらに驚いたのがメニューに書かれた価格。なんと、一番安いドリンクですら1杯約1万円‼︎ 

戸惑う2人に「私が奢るから」と告げて、飲んでやりましたよ……。

できるだけ時間をかけて、1杯1万円のシャンパンを、それはもう噛み締めるように。

そんなトンチンカンなタイ旅行も今ではしっかり笑い話に。

イラストレーター・中村桃子による連載挿絵
イラストレーター・中村桃子による連載挿絵
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そこから“年に一回の友達旅”が私たちの恒例行事に。昨年はシッカとカオリちゃんの希望でこんぴらさんへ。

「私たちもこんぴらさんにのぼりたいと思う年齢になったんだなぁ」と、感慨深い気持ちになりつつ、杖をつきながらのぼったよね。御本宮を経て奥社まで続く、1368段の階段を。

私が風邪をひいて熱を出したり、泊まった民泊が独特だったり、こんぴらさんの旅もまたまた珍道中で。笑える思い出話がいっぱい。

くだらないことで喧嘩したり、笑ったり、地元の友達と一緒にいると、学生時代の佳代ちゃんに戻れる気がする。それもきっと、私は楽しいんだろうな。

ただ、あの頃と違うのは、お互いに積み重ねてきたそれぞれの経験があるということ。

特にカオリちゃんはお母さんを、シッカはご両親をすでに亡くしていて。

親を看取った経験のある二人は、私にとって介護の先輩でもあるんです。

だからこそ、ことあるごとに話を聞いてもらったり、アドバイスをもらったり。

さらに、シッカは頻繁に帰省できない私のかわりに、実家の母の様子をよく見に行ってくれていて。そこで、父の介護の愚痴を聞いてくれたりするんです。

このあいだは、母を連れて近所のファミレスへ。

「まずい、まずい、と文句を言いながらもしっかり完食していたよ(笑)」って、LINEと一緒に元気そうな母の写真を送ってくれたりして。本当にありがたすぎるよね。

学生時代は楽しいことばかり共有していたけど、今は互いの悩みや苦労も共有しながら、支え合い助け合えるように。

大人になればなるほど、友情は熱く深く、友達はより大切な存在になっていくような気がします。

そんなかけがえのない友達であり、旅仲間でもある、シッカとカオリちゃんに最後に一言。

いつも支えてくれてありがとう。旅の手配もありがとう。

ただ、次の旅先は近くてもいいから海外がいいな。

「大久保さんですか?」と声をかけられない場所がいいな。

もう少しホテルも良いところに泊まりたいな。エアビーや民泊以外のところがいいな。

金は出すから、私が出すから、私、これからも頑張って働きまくるからぁぁぁ!


聞き手・構成/石井美輪 題字・イラスト/中村桃子 撮影/露木聡子