「なんでSM?」
「もともと、私がオナクラをやってたときに……なんかオナクラってあまり稼げないんですよ。お客さん全然来ないし。もう、おカネ欲しいとかって思ってて……。で、私は全然風俗慣れしてるんですけど、シホさんは大学2年のときに、風俗でほんのちょっと、それこそ1週間だけ勤めたくらいしか経験がなかったんですね。だから、『ちょっとどこか勤めてみてよ』みたいなことを私が言って、最初はSMじゃなくて、痴漢のイメクラみたいなところに勤めさせたんですよ。勤めさせたって、ほんと言い方悪いけど、フフフ。勤めてもらって……。そこがあんまり稼げなくて、『じゃあSMいってみよっか』って……」
「なんでSM?」
「SMってやっぱお給料が高いってのがあって……私は最初はM性感を調べてたんですね。けど、自分から言葉で責めるのって苦手というのがあって、じゃあやっぱSMかあって……」
M性感というのは、マゾ願望のある男性客を、女性側が言葉責めをしながらアナルを中心に刺激する風俗店である。それはさておき、彼女が当初の入店理由として口にしていた、「SMに興味があって、いじめられるとどういう感じかなって思ったんです」というのは、やはりリップサービスだったということがはっきりした。
いちばんの入店理由は、金銭的な問題だったのだ。彼女は続ける。
「最初はシホさんに入ってもらって、イケそうだったら、じゃあ私も~って。ハハハ」
「どれくらいの差で入店したの?」
「たしか1、2週間ですね」
「とりあえず確認しておくと、SMを選んだ理由って、やっぱりおカネだったわけだよね」
「うーん、そうだけど、興味もありましたね」
「シホさんと2人で、SMっぽいことをしてたとか?」
「そうですね。まああの、首輪買ったりとか、(お尻を)叩いたりとか……。あっちがドMなんで。向いてんじゃないって」
「カオルさん自身は、自分がMになる仕事をやってみてどうだった?」
「いや、痛いですね。フフフフッ」
「そうなんだ。じゃあカオルさんだけでもSMを辞めようってならないの?」
「私ですか?私はまあ給料いいし、なんか求めてもらってるし……。それに楽しい部分もあるし……」
彼女自身は前にも口にしていたが、やはり「求められる」という承認欲求が満たされることが、金銭面での満足とともに、風俗での仕事を続ける動機として、かなりのウエイトを占めているのだろう。
私はもう一つ気になっていたことを持ち出した。