収穫量は長い目で見ると右肩上がりだが、その要因は栽培面積の拡大であって、ヘクタールあたりの収量はむしろ減少傾向。やはり気候変動による影響なのだろうか?
「ブルゴーニュではまだブドウ栽培が行われていない適地を活用し、世界のニーズに応える体制を整えています。栽培面積の拡大は収量減少の解決策というより、世界の需要と供給のバランスを意識しながら品質維持を最優先に厳密に管理しています。
もちろん、気候変動の影響も避けられません。特に2021年と2024年の極端な低収量は、低温、霜や雹、多雨などが影響を与えています。そのため生産者たちは耐性のある品種の導入や収穫時期の調整など、柔軟な対応に取り組んでいます。こうした努力の積み重ねにより、ブルゴーニュワインは需要に応え伝統を守りながら進化し続けているのです」(ローランさん)
ワイン愛好家のマクロン大統領が本腰を入れる気候対策
具体的にどんな対策を取っているのか、ローランさんが続ける。
「例えば一部の赤ワインの醸造では、従来の除梗(じょこう/ぶどうのヘタや柄を取り除くこと)をやめ、全房発酵を取り入れることで、果実味や酸味を保ちながらエレガントな味わいを引き出す工夫がされています。またシャルドネやピノ・ノワールのクローンを利用した耐熱性のある品種の研究や、古い品種の遺伝資源を保存して将来的な改良や適応に備えています」
さらに国家的なプロジェクトとして、気候変動による新たな病害や虫害への対策が進行中で、ワイン愛好家で知られるマクロン大統領の気候変動対策の一環であり、農業分野での持続可能な取り組みとして積極的に推進している。
「過去の豊作で数年間は価格が安定する見通し」という見方も
そうなると一方では調査や研究にかかるコストがワインの価格を押し上げることが懸念される。加えて今年再び収量がガクンと減少しているのを見ると、近い将来ブルゴーニュワインがやはり雲の上の存在になる不安をぬぐえない。
「2021年のような急激な価格高騰はないと思いますよ。22年と23年の在庫が十分に確保されているので需要を満たす余力があります。また世界的なインフレによりマーケット全体が高価格に敏感になっていますし、何より生産者自身が価格をこれ以上上げないよう意識しているのです。今後3~4年は価格が安定する見通しで、日本市場でも『手の届かないワイン』になる心配はしばらくありません」とローランさんは自信をもって話す。