2024年のお笑いの賞レースは「始まり」
振り返れば2024年のお笑いの賞レースは、「始まり」を感じさせるものが多かった。
「R-1グランプリ2024」(3月開催)では、街裏ぴんくが優勝して「『R-1』には夢があるんですよ」と雄叫びをあげた。
そして「『R-1』王者はなかなか売れない」というジンクスを吹き飛ばすように、街裏は「水曜日のダウンタウン」(TBS系)などで活躍。
また同大会決勝には、事務所無所属の「どくさいスイッチ企画」が勝ち上がって4位に食い込んだ。名のある事務所の所属芸人が集まる中、この結果はまさに快挙だった。
事務所無所属芸人の快進撃は「女芸人No.1決定戦 THE W 2024」(12月開催)でも見られた。フリーの漫才コンビ、にぼしいわしが優勝を飾ったのだ。
大型のお笑いの賞レースで事務所無所属の芸人が頂点を獲るのは、2002年「R-1ぐらんぷり」のだいたひかる以来。
お笑い芸人の事務所独立が相次ぐ昨今、にぼしいわしの優勝は、賞レースに向けた新しいルートが開けた瞬間にもなった。
「THE SECOND〜漫才トーナメント〜2024」(5月)ではガクテンソクが優勝。
そんな中、同大会は「松本人志不在の賞レースの始まり」として話題に。
しかし、くりぃむしちゅーの有田哲平が松本に代わって大会の見届け人的役割に抜てきされた。有田がこういったポジションを引き受けるのは異例のことだ。
しかも、これまであまり絡みがなかった司会・東野幸治とのマッチアップも見ることができた。さまざまなところで新鮮さを覚える大会となったわけだ。
なにより、この「THE SECOND」で「松本がいなくても違和感なく賞レースを楽しめそうだ」というムードが広がったのではないか。
それでも「キングオブコント」は「M-1」同様、松本不在の影響がどれほどあるのか注目された。
しかし、東京03の飯塚悟志が“審査員長格”をきっちり務め上げた。他の審査員が94点、95点、96点と似通った採点を連発させたなか、飯塚は明確に点数差をつけていった。
そしていずれも、自分の審査基準や好みに忠実に採点・順位付けした。コントに対する自分の信念を貫き、厳しい目で出場者たちをランク付けしたその姿勢には、飯塚の覚悟があったように思える。
やはり松本不在からくる飯塚なりの責任感があったのではないか。
だからこそ、飯塚への審査への信頼が強まった。2025年の「キングオブコント」ももちろん、審査の中心的存在を担うことだろう。
松本人志不在からくるこれまでとは異なった動き、そしてお笑いシーンの新しい息吹を感じさせた芸人たちの存在。2024年は「始まり」を告げる1年だったように思えた。
取材・文/田辺ユウキ