最晩年に猛プッシュした「自民総裁候補」
中立・公平性が求められるメディア界にあって、渡辺氏は保守系の政治家を中心に政界にも強い影響力を持っていたことで知られる。
過去には 1994 年に自衛力の保持を明記した憲法改正試案を読売新聞の一面でぶち上げたり、2007 年に自民党と民主党(当時)に大連立構想を呼びかけたことも。いずれも政治的中立性を堅持すべき新聞社のトップとして異例の振る舞いだ。
そんな渡辺氏が最晩年に猛プッシュした政治家がいる。今年9月の自民総裁選に出馬して注目を浴び、いまや未来の宰相候補と目されるようになった「コバホーク」こと小林鷹之元経済安全保障相だ。
「今年の春先から自民総裁選への立候補をささやかれていた小林氏ですが、知名度の不足もあって出馬の道筋は描けていなかった。その小林が突然、読売本社を電撃訪問して渡辺主筆と面会したのは今年7月下旬のこと。
この面談で小林氏は渡辺主筆と将来の日米同盟のあり方について大いに語り、総裁選への出馬意欲を伝えた。すると、そのときの小林氏の言動をいたく気に入った渡辺主筆が自民党に『小林をよろしく』と猛プッシュしたこともあって、小林氏出馬が既定路線として党内で認知されるようになったと聞いています」(読売新聞 OB)
常々、「100 歳までは主筆として現役を続ける」と周囲に豪語していた渡辺氏。それより2年早い 98 歳での大往生となったが、今年は読売新聞創刊 150 周年の節目の年でもあった。合掌。
取材・文/集英社オンラインニュース班 写真/共同通信社