「キム」の信頼を得て実行犯リーダーに
京都市山科区出身の永田被告は中学時代から非行に走ったが、教師の勧めで介護施設でボランティアをしたことをきっかけに介護プログラムを学ぶ府立高校に進学。
しかし、この高校は中退し、石川県で土木作業員をしていたころにボートレースにのめり込むようになり、金銭感覚がマヒしていく。大勝ちした快感が忘れられずに「タネ銭」を消費者金融や闇金から借りるようになり、雪だるま式に借金が増えていった。
その頃、SNSで「闇バイト」と検索、凶悪犯罪への道に迷い込むことになったという。やがて指示役「キム」の信頼を得て実行犯のリーダー格として現場を差配するようになり、ついには人を殺めてしまった。
永田被告は山科区の集合住宅で母と弟の3人家族で育った。昨年1月の取材で、同じ団地の70代の住人はこう振り返った。
「永田さんは子供たちがまだ小さくて保育園くらいのときに3人で引っ越してきたんです。お父さんらしき人は一度も見たことがないです。子供の頃からとても可愛くてお利口で挨拶もよくしてくれました。元気な子で、すぐ横にある公園で団地の子たちとよく遊んでましたよ。やんちゃって感じでもなくて気さくないい子だったのに、なんでこんなことしちゃったんですかね」
永田被告の母親とママ友だったという40代の女性は、こう顔を曇らせた。
「永田さんの家は母子家庭で、母親と陸人くんと一つ下の弟の3人で暮らしてました。今は母親と弟が2人で住んでます。
家族仲はとてもよかったですよ、母親が持病で昔から体が弱いみたいで、息子たちが無理させないよう気をつかってましたから。
ウチの子とは学年は違うものの保育園、小学校、中学校と同じだったのでよく顔は合わせてました。子供の頃の陸人くんは、大人しく人見知りの弟とは対照的に、活発で友達も多いタイプでした、団地の公園でよく遊んでて、会ったら元気に挨拶してきて可愛かったですよ」
高校中退後は顔を見かけなくなったが、たまに帰省しては挨拶を欠かさなかったという。女性はこう続けた。
「お母さんからは、金沢で建設系の仕事をしてると聞きました。『遠くで真面目に働いてくれてすごくうれしい』と喜んでいたのを今でも覚えてます。2年前のお正月には、陸人くんが実家に帰ってきたので『久しぶりだね、元気してた?』と声をかけると、『お久しぶりです、元気してます』と変わらずちゃんと挨拶してくれました。
『頑張って働いてるんだってね、親孝行するんだよ』と言う私に『わかってます! 親孝行しますよ!』と返事をしてくれたので、本当に立派に育ったなあと思ってたんですよ。
事件のニュースでまだ名前が出てなかったとき、顔は陸人くんぽいけど彼はいい子だしな、と信じなかったほどです。母親は体も弱くて働いてないし弟はまだ専門学生、母親と弟を支えるために罪を犯してしまったのかなとも考えました…。ただこれが贅沢や自分のためだったなら同情の余地はないですね」
取材中、実家の玄関ドアが開き、弟らしき人物が外へ出て、声をかけるも振り向くことなく無反応で団地の外へと歩いて行く。兄の名前を出して呼びかけると、青年は上着のフードを深くかぶり足早に立ち去っていった。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班