Z世代のために
トランプ政権下で設立された団体の1つが、「明日の有権者たち」を名乗る「Voters of Tomorrow」という団体だ。団体のウェブサイトによると、メキシコからの移民の高校生が若者の政治参加を促そうと、2019年に、Z世代のための、Z世代による団体として発足させた。
2022年に行われた中間選挙にあわせて、若者たちによる政治サミットという会議を開催し、その後、のべ人数で800万人以上の若者の有権者に電話、ショートメッセージ、対面で接触したという。現在は20州に支部があり、ボランティアは全米50州すべてにいるという。
カリフォルニア州支部の2人の大学生がインタビューに応じてくれた。インタビューを行ったのは、大統領選挙の年が始まったばかりの2024年1月。筆者が前年の夏まで勤務していたNHKのロサンゼルス支局に来てもらった。
インタビューの場所に街中のコーヒーショップではなく、職場を選んだのは、2人とも女子学生である上、会うのは初めてなので、安心して来てもらいたいという考えからだった。
支部を取り仕切る2人は、UCバークレー=カリフォルニア大学バークレー校で文学を専攻するジアン・トランさんと、UCLA=カリフォルニア大学ロサンゼルス校でヒューマンバイオロジーと経済・経営を専攻するアーシ・ジャワーさん。
共に大学1年生の18歳だ。トランさんはベトナム系で、ジャワーさんはインド系だ。
インタビューでは、活動に関わる動機から話してもらった。トランプ大統領の登場に危機感を抱いたというトランさんはこう語る。
「私はベトナム系の家庭で育ちました。両親は共に難民としてアメリカに来たのです。私にとって大きかったのは、2016年の大統領選挙です。トランプ氏が大統領に選ばれました。私はまだ中学生でした。しかし、私は、特に極右の人たちが大騒ぎしているのを見て、これは明らかに正しくないと思いました。
白人至上主義とヘイトのメッセージの流入が起きていました。私は自分に『よし、しっかりと足を地につけて動き始めよう』と言い聞かせました。私は活動に参加し、私のような若い世代の人々を動かすことに情熱を注いでいます」
一方のジャワーさんは、同じ頃にアメリカが抱えるさまざまな社会問題への関心を強めていったという。
「私の両親はインドから移民として来ました。私たち子供に明るい未来を生きてほしいという思いからです。しかし、私は、自分が成長する中で、多くの差別的なことが見えるようになりました。そして、私は銃による犯罪、心の健康、体の健康という問題に関心を持つようになりました。
私は医者になりたいと思っていたのですが、交通事故に遭ってしまいました。大変な治療を経験し、この国の健康保険システムは、あまりにもお役所仕事的で、人々は困難に直面し、多額の支払いを求められ、さらに医療サービスは遅いということに苦しんでいるとわかったのです」