まずは山ありき、次に温泉施設
――『温泉百名山』刊行後の反響はいかがでしたか?
びっくりするくらいの反響でしたね。出版社も驚いたんじゃないですか。そんなに期待してなかったはずですから(笑)。
反響を呼んだ理由としては、まず政府がコロナ禍の外出抑制から経済活動優先に舵を切ったタイミングで、マスメディアもようやくこの手の書籍を取り上げてもいいかなという風潮に乗ったからでしょうね。ラジオから始まり、新聞、雑誌が次々と取り上げてくれました。
特にラジオではNHK第1の「石丸謙二郎の山カフェ」出演、新聞では朝日新聞の「著者に会いたい」のインタビュー記事の反響が大きかったですね。
そのうち読者から、もっとハードルの低い初級者や年配者向きの温泉百名山を紹介して、という声が数多く寄せられました。
確かに、前作では山小屋に泊まらなければ行けない山と温泉も多く、一般の読者には追体験が困難なコースが少なくありませんでした。そうした声のおかげで、続編の『日帰りで登れる 温泉百名山』へと繋がりました。
――今回選定された山と温泉はどんなところでしょうか。
一言でいえば「登山口から日帰りで登れる眺望のいい山」、そして山のあるふるさとを持つ人が、ふるさとを遠く離れてまっさきに思い浮かべるであろう「ふるさとの山」の情景。そうした山を中心に選びました。
麓からいつも仰ぎ見ていた山ということになりますから、標高1300m未満の低山も多く含まれることになりました。
それと、要望の多かった、途中までゴンドラリフトやロープウェイで行ける山も多く取り上げました。
山頂までロープウェイで登れる山は物見遊山になりますから外しましたが、終点駅から山頂まで1~2時間で登れる山は、まさにテーマとした登山口から日帰りで登れる、初級者や年配者向けのうってつけの山ですから。
北海道では大雪山の旭岳と黒岳、東北では八甲田の赤倉岳、黒倉山、森吉山、月山、蔵王山、安達太良山(あだたらやま)、関東では大岳山と筑波山もこれに含んでもいいかも。
甲信越では木曽駒ヶ岳、八方尾根、白馬乗鞍岳、北陸・近畿・東海では奥大日岳と立山、西穂高岳独標。中国・四国・九州では三瓶山、石鎚山があります。
温泉は、前作では「品格」「歴史」「個性」にこだわった名湯を選びましたが、今回はそれにはこだわらず、下山して気軽に汗を流せる温泉施設であればいいということにして、立ち寄り湯を受け付けている温泉旅館に加えて、近年開設された日帰り温泉施設も入れました。
その意味では、選定段階ではまず山ありき、次にその山の麓や登山口近くに温泉施設があるか、という選び方になりましたね。