「太田さんの二の舞にならないか」と心配する声が
1958年生まれの石井氏は、東大工学部を卒業し、旧建設省に入省。キャリア官僚としての経験を生かして2015年から歴代最長となる3年11カ月にわたって国交相のポストを守り、幹事長も4年務めた。
党内では早くから「将来の代表候補」と期待を寄せられてきた。埼玉14区への出馬は、代表としての実力を図る試金石ともなるが、その挑戦を不安視する声も党内では上がっていたという。
「そもそも我が党にとって、首都圏の埼玉や神奈川は参院選でも最重点区に位置づけられる場所です。毎回、牙城である東京よりも厳しい戦いを強いられてきたのがこの地域。さらに、選挙区での戦いに集中しても厳しいのに、石井代表は党幹部としての役割もある。
今回は、『常勝関西』と呼ばれ、長年議席を守ってきた大阪3区をはじめ、大阪・兵庫の6選挙区で維新との全面対決となっています。『大阪で議席が半減するのでは』とも言われるなか、関西での足場を守れるか否かの正念場で、石井代表も当然、そちらに応援に入らなくてはなりません。本当に大丈夫なのか、という声はほうぼうから上がっていました」(前出の公明党関係者)
そんななか、公明党や支持母体である創価学会の関係者らの脳裏に浮かぶのは、民主党旋風が吹き荒れた15年前の衆院選での波乱である。
「当時の太田昭宏代表が選挙区で、民主党の新人・青木愛氏に敗れた。当時は、政権交代の機運が盛り上がり、『小沢チルドレン』と呼ばれた青木氏のような新人候補が大量に当選。
太田さんは重複立候補を辞退し、東京12区のみでの出馬だったため、比例復活もできなかった。太田さんは国交相も務め、『プリンス』と呼ばれるなど党内での人気が高かったため、選挙区での敗北は党の内外に波紋を広げました。
何より、現役の代表が落選するという衝撃は大きかった。今回、石井代表も重複立候補をせずに小選挙区で勝負をかけていますが、当時のいきさつを知る人の中には『太田さんの二の舞にならないか』と心配する声があるのも事実です」(同前)
今回は、池田大作・創価学会名誉会長が亡くなってから初めての衆院選でもある。カリスマ不在で迎える決戦で、党勢を維持できるのか、あるいは衰退の序章となるのか。審判はまもなく下される。
取材・文/集英社オンラインニュース班