党勢維持への「深刻な危機感」 

今回が小選挙区としては初陣となる石井氏。1993年の初当選以来、比例代表東京ブロックや北関東ブロックで当選を重ねるなか、公明が2023年3月に石井氏の擁立を決めた。

連立を組む自民側としては選挙区を譲った格好となったが、その合意に至るまでには両党での激しい駆け引きがあったのだという。

公明党の石井啓一代表(Xより)
公明党の石井啓一代表(Xより)

「『10増10減』で選挙区の数が増えたのは東京、神奈川、愛知、埼玉、千葉の5都県。あわせて10の選挙区で調整が行なわれましたが、決定に至るまでには揉めに揉めた。

埼玉では、今回から県内の選挙区が1増で計16区になり、これまで草加、三郷市などを地盤に自民で当選してきた2人が、それぞれ3区と13区から出馬することになりました。

新たな区割りとなった14区に石井氏が入り込む形となりましたが、地元の県連同士の話し合いはすんなりいったわけではなかった。石井氏の出馬を巡って自民党県連の反発は大きく、今もしこりが残っている状況です」(同前)

公明党の石井啓一代表(本人Xより)
公明党の石井啓一代表(本人Xより)

 選挙区を巡る与党内での対立が表面化したのは昨年5月。当時、幹事長だった石井氏が、茂木敏充幹事長(当時)ら自民執行部に「信頼関係が地に落ちた」と言い放ち、東京の選挙区での選挙協力の解消を通告したことが明らかとなり、政局への影響が取り沙汰された。

公明側が強硬な態度を崩さなかった背景には、党勢維持への深刻な危機感があったともされる。

「支持母体である創価学会の会員の高齢化が進み、集票力にも陰りが出ています。比例代表の得票数は減少が続き、2022年の参院選挙では目標に掲げていた800万票に遠く及ばず、得票数は618万票にとどまった。

党勢の衰えに歯止めをかけるためにも、党内きっての実力者である石井氏を小選挙区に送り込むことで勝負をかけたのです」(同前)