スマホの登場で性の情報が際限なく……
今回の事件では、被害を受けた2年生の女児が避難訓練で加害男児と同じ教室に連れて行かれ、男児の姿を見たことから体調が悪化。40度近い高熱を繰り返して学校を欠席することが多くなり、医師からは心的外傷による急性ストレス障害と診断されたという。
学校側の「2次被害」ともとれる対応が問題視されているが、学校ではどのように性教育、対策を行っているのだろうか。東京都内の現役の小学校教諭に話を聞いた。
「小学4年生になると、二次性徴の授業を男女まじえて行います。『おっぱいが膨らむ』『毛が生えてくる』など、わりと赤裸々に語ります」
ただし、このような授業が役に立っているかは、おおいに疑問だという。
「小学6年生で保健の授業をしても『別に、それ知ってるし』という反応をされて終わりますね。知識を仕入れる場所は学校だけでなく、塾や、年上のきょうだいである場合も多いので」
なにより今の子どもは、スマホやタブレットなどで知識を仕入れてしまう。
「レコメンドで際限なく、その類のものが流れてきてしまいます。『面倒だから』と親のスマホをそのまま与えている方も多いですが、必ずキッズモードにして制限をかけてほしいです」
この教諭は「30年以上教員生活を送ってきましたが、児童の性被害に遭遇したことはありません」と語る。そのため、今回のニュースを聞いて驚いたそうだ。
事件で、被害を受けた女児は女性職員の付き合いがないとトイレに行けなくなってしまった。その際、担任の男性教諭から「トイレまで加害者が来るわけないだろう」といわれたことで、深く傷ついたというが……。
「ありえません。もし、うちの小学校でもし誰か1人でも被害者が出たら、担任だけでなく、学校中の先生で守ります。『安心して学校に来てね。なにがあっても、先生たちがみんなで守るから』というメッセージを送るつもりです」
伝わってきたのは、真摯で力強いメッセージだった。
――一瞬の出来事が、一生の傷をつくることがある。
傷をいやすのは「もう大丈夫だよ」という、大人から与えられる安心感なのかもしれない。
取材・文/綾部まと