「手話は見る言葉」という吉沢亮のコメントがうれしかった

――幼い頃の大は「お母さん大好き」ですよね。でも成長して次第に自分の親は、友だちの親とは違うことに気づいて悩み始めるシーンは、大が家族の問題に初めてぶつかったと思いました。

両親に聴力がなく、手話でしか会話できないことを友だちにはからかわれるし、「なぜ僕の家だけ」と葛藤を覚えはじめます。思春期と重なったこともあり、大は反発して手話で話さなくなっていきますが、明子は負けずにどんどん手話で話しかける。でも大は振り向いてくれない……という時期が長く続くんですね。

私は息子だからこじらせたのかなと思いました。娘だったら、こんなに長く親と距離を取らなかったのではないかと思います。

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――忍足さんには娘さんがいるんですよね。

12歳の娘とはコミュニケーションも多く、「お母さん、おもしろいね」とよく言われます(笑)。親子ですがいつも対等な感じがするんです。私たち親子は手話のコミュニケーションがいい方向に作用しているのかもしれません。

――息子の大を演じた吉沢亮さんも本作では手話に挑戦していました。共演はいかがでしたか?

素晴らしかったです。吉沢さんは、普通のセリフも話しつつ、家族のコーダとしての役割、そして自分の気持ちを手話で表現するという、3つの難しい要素をこなさなければなかったので、撮影の合間などは声もかけられないくらい役作りに集中されていました。

過酷だったと思うので「吉沢さんが手話嫌いにならないといいな」と心配をしていましたが、「手話は見る言葉、相手と目を合わせなければ会話が成立しないんですね。すごくおもしろいです」と言ってくださって、ホッとしました。

©五十嵐大/幻冬舎 ©2024「ぼくが生きてる、ふたつの世界」製作委員会
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