突然スターに、隠しきれない不安と戸惑いの始まり
エイミーは10代でレコード契約して、20歳になったばかりでデビューアルバム『FRANK』をリリースした。プロデューサーのサラーム・レミは、「彼女の歌を聴いた瞬間、本物だと思った。まるで65歳の熟練のジャズ歌手みたいな歌い方だ。18でこれじゃ、25になった時どうなるんだと思った」とエイミーの才能を表現した。
しかし、エイミー自身は自分の歌や音楽が一般受けしないと思っていた。
「売れたらいいと思う時もあるけど、私は有名にはなれないわ。もし有名になったら対処できなくて頭が変になる」
このとき、同じように子供の頃から心に傷を持つブレイク・フィールダー・シビルと恋に落ちるが、同時にアルコールへの依存が高まっていく。さらに最愛の祖母が亡くなり、大きなショックを受ける。
2006年、セカンドアルバム『Back to Black』をリリース。シングル『Rehab』も大ヒットして賞レースも活発化。ビーハイヴヘアとキャッツアイメイクで“映え効果抜群”のエイミーには、メディア露出と注目が集まる。
「自分は売れない。有名にならない」と思っていたエイミーにとって、突然スターになってカメラのフラッシュを大量に浴びる状況は、天狗になるどころか戸惑いしかなかった。日増しに不安と恐怖に覆われ、自分を取り巻く状況に「どうしたらいいの?」と混乱した。
そんな中、ブレイクと結婚するものの、それはドラッグに深くのめり込んでいく最悪の生活の始まりでもあった。そして相次ぐツアーキャンセルの後、夫ブレイクは逮捕。エイミーはリハビリ施設へ入所。
タブロイド紙のパパラッチのフラッシュの餌食にされる日々の中、エイミーは一方的な報道の中で破天荒なイメージに覆われた。
「私を知れば世間は理解するはず。私は音楽しか能のない人間だって。だから放っておいて。音楽をするから。音楽をする時間が必要なの」