腸の環境を悪くする主な食品3つとは?

すべての人の腸に対して悪さをするものなのかどうかを科学的に判断するのは難しいのですが、腸内環境にとってあまり良くないものが何であるかは分かっています。

例えば、小麦製品(パン、ピザ、パスタ、うどんなど、見た目として小麦由来の食べ物と認識できるもの)、牛乳、人工甘味料です。このように言ってしまうと、「フードファディズム(food faddism)」のように感じられる方がいらっしゃるかもしれません。フードファディズムとは、食品や栄養が健康や疾患に与える影響を過大に評価したり信じたりすることです。

ところが、実際の診療において、小麦製品そのものや牛乳を控えると、便秘や軟便といったおなかの症状が改善される患者さんがいます。

小麦製品、牛乳、人工甘味料を摂取していても、何も身体的な異常が起こらない方が多いのですが、一部の人にとっては「合わない」ということがあるという現実は、いくつかのデータによって示されています。

「小麦製品・牛乳・人工甘味料」化学物質過敏症の人が控えるべき3つの食べ物。整えるべきは「腸」の驚くべき理由_2

小麦製品の場合

なぜ一部の人にとって小麦製品は腸にあまり良くないのでしょうか。

小麦製品には、グルテニンやグリアジンといったさまざまなタンパク質が含まれていますが、消化管に対して悪さをするタンパク質としてはグルテンが注目されています。小麦製品がダメという疾患の1つに、グルテンに対して異常な免疫反応(腸の炎症)が生じる「セリアック病」があります。

また、セリアック病の基準は満たさなくても、グルテンが消化管に対して悪さをする場合もあります。これを「グルテン不耐性」といいます。血液検査でグルテンに対する特異的IgE抗体を測定しても陰性、つまり、アレルギーではないため、実際に小麦製品を除去してどう反応するかを確かめるしかありません。

ここで、少し横道にそれますが、IgE抗体とは何かについて説明しましょう。

アレルギーの原因となる食物に含まれていて、生体にアレルギー反応を引き起こす物質を「アレルゲン」といいます。このアレルゲンが体内に入ると、それを排除しようとアミノ酸配列による「抗体」が作り出されます。それが、「免疫グロブリン(Immunoglobulin略称Ig)」と呼ばれるタンパク質の一種で、働き方によってIgA抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgG抗体、IgM抗体の5種類に分けられます。

このうち、アレルギー症状を引き起こすのがIgE抗体で、ダニがアレルゲンであればそれにくっつくのはダニ特異的IgE抗体、そばがアレルゲンであればそば特異的IgE抗体と呼ばれます。

一方、患者さんからは時々、血液中のIgG抗体検査についての相談を受けることがあります。免疫ブログリンの約8割がIgG抗体で、食物アレルギーの原因食品を特定するために、施設によってはこの検査が網羅的に行われることがあります*2。

IgG抗体は食物アレルギーではない人にも存在し、IgG抗体価(レベル)は単に食物の摂取量に比例しているだけなので、検査結果が陽性だったことを根拠としてその食物を除去しても、無関係の食物まで除去してしまう恐れがあります。

そのために、日本アレルギー学会は、食物アレルギーの原因食品の診断法としてIgG抗体検査は推奨しないことを学会のホームページで発表し、私も診療の補助としては使用していません。