投稿や報道を見て「ゾッとしました」

ことの発端は4月10日のことだった。札幌市内の市立中学校の体育館で行なわれた学年集会で、中学1年生のクラスを担当する女性教員が資料をはさんだファイルを体育館のステージ脇の演台に置き忘れた。

資料には1年生267人分の氏名、性別、学習の状況や友人関係、家族状況、病気、障害などを含む生徒の“個人情報”が細かに記載され、さらには「低学力」「ちょろすけ」「父親うるさい」といった一部の生徒を中傷するような表現もあった。

女性教員は数日後にファイルの紛失に気づき、同僚教師らと捜索するも見つからず、4月18日に体育館の舞台袖から発見された。

写真はイメージです
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その後、市教委は4月25日付で「学校外への流出やSNSなどでの拡散は確認されていない」と公表していたが、6月5日に有名インフルエンサーのSNS上で女性教員が紛失したとされる資料3点の画像が投稿された。ITライターは言う。

「ファイルは複数人の生徒が閲覧した後にスマホで撮影され、その画像が次々と生徒間に出回った後、何らかのルートでインフルエンサーの元に渡ったようです。

SNS上ではこの資料とされる3枚の画像が6月5日15時44分に投稿され、同日22時時点で1500万回以上の閲覧数に上り、6月6日13時に削除されました。ですがすでに複数の“魚拓”がとられており、この画像を完全にネット上から消すことは難しいでしょう」

この一連の投稿や報道を見て「ゾッとしました」と答えたのは埼玉県の公立小学校教師のAさん(38)だ。

「もし自分が流出させてしまったらと思うと想像を絶します。この資料は主に“引き継ぎ資料”などと呼ばれているもので、生徒の現況把握や生徒と接する上で重要な情報をまとめたものです。公立の小中高では必ず作成するもので、クラス替えには欠かせない資料。

一部報道では生徒の行動や特性について『中傷のような内容』と書かれていましたが、生徒が安全に学校生活を送るため、かつ保護者とスムーズにやり取りするための申し送り事項なので、決して教師が中傷目的だけで書いたものではないと思います。

私の職場ではふだんは職員室の耐火書庫に保管されており、職員室外に持ち出しは不可です。扱いには細心の注意を払うものだからこそ、今回の紛失事件の顛末は肝を冷やす思いで見ていました」

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では、この引き継ぎ資料、具体的にどのような内容となっているのか。

「今回の流出資料は右から順に『親配慮』といった情報や担任のコメントが書かれていましたが、書き方は学校によっても違い、先生の癖も出ます。

私の学校では1年生から5年生は一番左側に『名前』、真ん中に『運動』『学力』『リーダーシップ』『社交性』などの項目ごとに◯か△で評価する欄があり、一番右に備考欄としてアレルギーの有無や『ケンカっ早い』といった要注意事項や、『◯君と同じクラスにしないほうがいい』などのクラス編成に関係する内容を書きます。保護者の性格などを記すこともあります」