高知東生は依存症回復のエリート 

田中 依存症からの回復12ステップというのがあって、それを支えることを「スポンサーシップ」と呼びます。自助グループと聞くと、多くの人が車座になって行うミーティングを想像すると思いますが、実際はそれだけではありません。逮捕された芸能人で、高知さんのようにきちんと回復の12ステップに取り組んでいる方は、私の知る限り一人もいません。なので、高知東生は依存症からの回復のエリートなんです。

高知 最初は田中さんとも喧嘩しまくったけどね。地元で暴れていた頃より、もっと喧嘩したかもわからない。脳みそ飛び散るかと思ったよ。

田中 こっちだって覚悟決めてやってるんだから、言いたいことは全部言ったし、ガンガン詰めましたね。嫌がっていた講演会の依頼だって、芸能の仕事ができないんだから、新しいことやるしかしょうがないじゃんって。この映画の中でも、応援してくれる人や企業が出てきますが、世の中には意外といるんですよ。マスコミは自分たちにお金を出してくれる企業のことしか宣伝しないだけで。

「オーバードーズで亡くなった海外の俳優の洋画はよくて、日本の俳優が薬物で捕まると上映中止になる意味がわからない」高知東生9年ぶり商業映画はギャンブル依存症がテーマ_6
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高知 それは本当に実感するね。それまでは芸能人じゃなくなったら俺は終わりだと思っていたし、逮捕された後なんかは、日本中が敵だと本気で思ってた。でも、世の中にはそれでも応援してくれる人たちがたくさんいた。声をかけてくれた人だけじゃない、一緒に行動をしてくれた人もいっぱいいた。逮捕されてからの俺は、とにかく謝ってばっかりだった。
どこへ行っても、誰と会っても、「申し訳ございません」「申し訳ございません」って。でも回復の12ステップに取り組んで、仲間たちと出会ってからは、「ありがとうございます」って言うことのほうが多くなった。自分一人では生き直しなんて絶対にできないんだよ。この映画でも、そういう仲間の大切さが伝わるといいな。
 

ナカムラ この映画では、決められたセリフではない、高知さんの生の声を聴くことができるので、きっと伝わると思います。

田中 出演する俳優が薬物で捕まったときに、その映画が上映中止になったり、ミュージシャンが捕まると作品が回収されたり、そういうの本当に意味がわからないし、心底腹が立つ。一方で、オーバードーズで亡くなった俳優が出演している映画でも、海外の作品なら普通にテレビで放送してる。だったらこの映画は、出演者全員が逮捕歴のある人にしてやろうと思ったんだけど、まぁそういうことにはなっていないので、ぜひ劇場でご覧ください。
 

前編も併せてお読みください

【前編】宮沢りえの首を絞めすぎてりえママから怒られ、石原軍団から山盛りのフルーツとヘネシー…俳優復帰の高知東生が眺めた昭和と令和の役者魂

取材・文/おぐらりゅうじ 撮影/高木陽春

『アディクトを待ちながら』

2024年6月29日より新宿K’sシネマほか全国順次公開
2024年製作/82分/G/日本
配給:マグネタイズ
© 2024ギャンブル依存症問題を考える会

「オーバードーズで亡くなった海外の俳優の洋画はよくて、日本の俳優が薬物で捕まると上映中止になる意味がわからない」高知東生9年ぶり商業映画はギャンブル依存症がテーマ_7

高知東生が主演を務め、依存症からの回復を題材に描いた人間ドラマ。
大物ミュージシャンの大和涼が覚醒剤と大麻の所持で逮捕され、大きなニュースとなった。それから2年後、依存症患者たちによって結成されたゴスペルグループ「リカバリー」が音楽ホールでコンサートを開催することに。メンバーの中には事件以来ずっと沈黙を貫いてきた大和の名前もあり、出演の知らせを聞いたファンたちが続々と会場につめかける。薬物やギャンブル、アルコール、買い物、ゲームなどさまざまな依存症者で構成される「リカバリー」のメンバーたちは互いに支え合い、依存性物質に再び手を出す「スリップ」を行うことなくコンサートに漕ぎ着けた。しかし、開始時間を過ぎても大和が現れず……。