東京の企業が地方のカネ吸い上げる問題

――地方創生の問題点について、もう少しお聞きしたい。地方創生を進めるうえで、自治体の仕組みはうまく機能していますか?

鈴木 実務的な面を語る上で、公務員の人員配置の問題は大きいと感じます。せっかく人を紹介したり、事業を立ち上げたりしても、2年サイクルとかで部署が変わってしまう。これではなかなか知見が溜まらない。

守時 それは本当にそうで。僕が8年間務めた須崎市役所から独立して地域商社を立ち上げたのも、この問題からなんです。

――守時さんが立ち上げた「パンクチュアル」は、日本各地の名産物のEコマースや、ふるさと納税のプロモーションを手掛けてらっしゃいますね。

守時 4人で立ち上げた会社が2年目に15人になって、3年目に40人、4年目に100人になって、今年新卒が38人も入ったので150人近い規模になりました。

僕が思うに、地方への移住って何かが気に入ったとかより、人間関係や仕事があれば移住するものなんです。うちではほぼ全員、正社員として雇用して、住民票も移してもらって、地域の人々と密に仕事をしていくスタイルをとっています。

これ、いわば「異動のない市役所」を作りたかったんですね。役所みたく人事異動がない、それゆえ知見が溜まる、能力が高い集団。そんなものを目指しています。

須崎市のふるさと納税は高知名物「鰹のたたき」(ふるさとチョイスより)
須崎市のふるさと納税は高知名物「鰹のたたき」(ふるさとチョイスより)

鈴木 今の地方創生のテンプレみたいな動きとして、東京の会社がコンサルで入って、自治体から高額の報酬をもらって……みたいなのもありますよね。

守時 そうなんです、あの東京一極集中な感じが本当に嫌で。
公務員をやってたとき、たくさん見てきたんですが、東京から来た大企業が企画だコンサルだってお金を吸い上げていくんです。

それが嫌で、自分がつくった会社では、仕事をもらったらそこに営業所をつくって、住民票も移して。うまくいってるときは地域の人と一緒に喜んだらいいし、うまくいってないときは地域の人と一緒に悩みなさい、と。いまでは20拠点くらいになるのかな。だいぶ規模が拡大しました。

――守時さんが地域密着というコンセプトで地方創生に向き合うなか、鈴木さんはテレワークの活用で企業や仕事を誘致しています。

鈴木 「地方にいい人材なんていない」「優秀な人はいない」と嘆く声は、今もよく聞きます。でも、決してそんなことはありません。

出産や子育て、介護などライフステージの変化で地方に転居せざるをえなかった女性の働き手はたくさんいますし、彼女たちの中には驚くほど優秀な人が多い。弊社は東京にある会社ですが、中核メンバーの9割が東京外で、優秀な女性スタッフは本当に多いです。

むしろ、地方にないのは「東京と同水準の賃金がもらえる、やりがいのある仕事」。それをテレワークというツールを使って、地方に雇用をつくり出す。まずは僕らがお仕事を持っていきます。

それができる人材が揃ってきたら、今度は企業を誘致するように動いていく。人材は適時、リスキリングしていく。こんな感じで、地方に魅力ある雇用をつくれるようにしています。