「浮世絵繁盛記の巻」(ジャンプ・コミックス第149巻収録)
今回は、浮世絵の価値を知った両さんが、例によって例のごとく、一攫千金を夢見て大暴走するお話をお届けする。
本作に登場するお年寄りは、両津家の親戚筋に当たる男「両津彦左衛門」で、浮世絵の刷り師だ。両さんは彦左衛門の工房に赴き、その腕前のほどを確認すると、新たな「現代の浮世絵」を考案する。
浮世絵のうんちくについては本編でお読みいただけるので、ごく簡単に述べておくと……。
浮世絵の特徴のひとつに、豊かな色彩が挙げられる。「絵具を版木の上に乗せ刷毛で塗り広げる」「版木上に紙を置き、馬楝(ばれん)と呼ばれる道具を使って紙に絵具をしっかりと押し当てる」「刷る位置がずれないように注意しながら、淡い色から濃い色の順に15~20回ほどこれを繰り返す」といった行程を経て、何色もの版が重なった版画が完成する。
そして浮世絵の制作は、3種の役割による完全な分業制によっておこなわれる。
まずは言うまでもなく、浮世絵の原図となる下絵を描く絵師、次に、使用する色ごとに分かれた版木に絵を彫っていく彫師、そして版木を使って絵を紙に刷る刷り師。どのポジションが欠けても、あるいは技術が劣っていても、みごとな浮世絵を生み出すことはできないのだ。
彦左衛門はその道80年という大ベテランの刷り師。両さんの生家の家業は佃煮屋だが、親戚には手に職を持った者が多いようだ。
両津家の次男・金次郎の結婚式を描いたお話「兄として…!の巻」(ジャンプ・コミックス第78巻収録)で親戚の名と職業を記した一覧の中には、浮世絵の刷り師も挙げられていた。おそらく彦左衛門のことだろう。
それでは次のページから、両さんと親戚の老刷り師による、現代アートとしての浮世絵が爆誕するお話をお楽しみください!!