薬の多量摂取で転倒リスクが倍に

多くの種類の薬を一緒に飲むことでどのような作用が及ぶのかはほとんど検証されていないのですが、唯一わかっているのは、5種類以上の薬を飲むと転倒のリスクが倍になるということです。

特に女性の場合は骨粗鬆症の傾向もありますから、転倒したら骨折する可能性が高く、それがきっかけで体の自由が効かなくなってしまう危険もあります。これはもう、立派な薬害ではないでしょうか。

『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015』(一般社団法人日本老年医学会)より
『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015』(一般社団法人日本老年医学会)より

近年高齢ドライバーの暴走事故が問題になり、認知機能や判断力の話を持ち出して、あたかも年齢だけが原因であるかのような話になっていますが、そんなことよりむしろ服用している薬が影響していると私には思えてなりません。

高齢者はたいがい何らかの薬を服用していますから、降圧剤で血圧が下がりすぎたり、糖尿病の薬で極端な低血糖に陥ったりしたせいで、意識障害を起こしてしまったのかもしれません。

他の病気の薬のせいでせん妄という意識障害のような症状が出ていた可能性だってあると思います。もちろん意識がもうろうとした状態はとても危険で自動車の暴走事故が起こっても不思議ではありません。

60代で5種類以上の薬を飲んでいると転倒リスクが2倍に…健康長寿につながらない、本当は怖い薬の副作用とは_4

製薬会社に忖度しているのか何なのかはよくわかりませんが、テレビなどでそういう問題に声をあげる人は私の知る限りほとんどいません。そんな重大な問題を一切検証することなく、「年寄りは免許を返納しろ」という空気をつくり上げていくことに私は強い憤りを感じずにはいられません。