「よく考えてみたが、6月の議会をもって職を辞そうと思っている」

川勝知事は前日の入庁式で新人に県職員としの「心構え」を説くとしてこう述べた。

「県庁というのはですね、別の言葉でいうと、シンクタンクです。毎日毎日野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたり、あるいは物を作ったりということと違ってですね、基本的に、その、皆様方は頭脳、知性の高い方たちです。

ですから、それを磨く必要がありますね。で、それは磨き方、色々あります。知性を磨くということ、それからですね、やっぱり感性を豊かにしなくちゃいけない。体がしっかりしなきゃいけませんね」

これはどう読んでも農家や畜産業や酪農従事者、ものづくりの職人などを知性の低い肉体労働者と位置づけ、それと比して県庁職員は知性の高い頭脳労働者なので頑張りなさいという意味にしか聞こえない。

これを聞いて「ああ、知事は我々を鼓舞してくれているのだ」と感じた新人職員が一人でもいたとしたら、静岡県庁は終わりの始まりだ。これまで数々の失言、放言を繰り返してきた川勝知事の尻拭いをしてきた県職員たちも、ついにたまりかねて梯子を外し、ご退場願ったのであろう。

川勝知事(写真/共同通信社)
川勝知事(写真/共同通信社)
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翌日、記者団に「メディアの切り取り方が問題」と発言自体は不適切でなかったと強がりながら、「よく考えてみたが、6月の議会をもって職を辞そうと思っている」と漏らした老知事には、一抹の寂しさが垣間見えたという。

川勝氏は京都市内のミッション系名門高校を卒業後、早稲田大学・同大学院で経済学を学び、同大の教授や国際日本文化研究センターの副所長などを歴任。

1993年から4期連続で静岡県知事を務めた石川嘉延氏のブレーンを務めた縁で静岡文化芸術大学学長に就任し、石川氏の知事辞任を受けて2009年に静岡県知事選に立候補し初当選。以降2021年まで4期連続当選を重ね、2025年7月4日まで任期を残していた。

川勝氏の知名度を一躍全国区に押し上げたのは、JR東海が2027年の品川−名古屋間の開業を目指して進めてきたリニア中央新幹線計画に「待った」をかけたことだった。

静岡県などを通って同区間を最短40分で結ぶ計画は、川勝氏が2021年の4選目の選挙で「静岡県最大の危機。大井川水系という命の水が失われかねない」という主張を最大争点に設定して民意を問い、圧勝した。

川勝知事はリニア中央新幹線計画に待ったをかけた
川勝知事はリニア中央新幹線計画に待ったをかけた