不出馬は世耕氏を道連れにする狙いも?
一方、二階氏の引き際は裏金問題を巡る政局を見定めたものとなった。
裏金を所属議員にキックバックしていたことで大問題となった安倍派の幹部4人に岸田文雄首相自身が聴取をする3月26、27日に先駆けて不出馬を表明することで、安部派幹部らにもきちんと責任を取らせるよう圧力をかける形になったからだ。この4人のうち1人には二階氏と地盤を同じくする世耕弘成前参院幹事長もいる。
自民党関係者は「世耕氏は総理総裁を目指す考えを以前から示しており、参院和歌山選挙区から衆議院に鞍替えすることを狙っている。その選挙区が、二階氏が当選を重ねてきた和歌山3区(次期衆院選では「10増10減」の区割り見直しで和歌山2区となる)だった」としたうえで「二階氏は息子に国会議員を世襲させたいと考えている。安倍派の幹部が聴取を受ける前に責任を取ることによって、世耕氏に重い処分が下される流れを作り、動きを封じ込めようとしたのだろう」と解説する。
冒頭のように、会見では年齢と不出馬の判断は関係がないとして記者に凄んで見せた二階氏だったが、それでも85歳という高齢を迎え、永田町ではいつ国会議員から身を引くかが注目されていた。最終的には、次の選挙での不出馬表明も、政局的な駆け引きのカードとして利用したわけだ。
自民党で幹事長を5年以上務めただけあって、最後の最後まで権力に対して貪欲だったといえるだろう。
ベテラン秘書の1人は「二階氏は10年ごとに大きな転機を迎えてきた」と振り返る。
1983年に初当選を果たした二階氏は1993年に自民党を離党し、小沢一郎氏らとともに新生党を結成。2003年には自らが幹事長を務めていた保守新党が自民党に吸収される形で10年ぶりに自民党に復党している。
2013年には自民党が政権復帰を果たした第2次安倍政権で衆議院の予算委員長となり、2014年には来年度予算案を与野党の人脈を駆使して異例のスピード審議で衆議院を通過させ、その後の総務会長、幹事長就任に道筋をつけた。
そして、2023年に自民党裏金問題が発覚し、今年になって二階派は解散。二階氏自身も国会議員としての活動に区切りをつけることとなった。
新党ブームから民主党政権誕生による自民党下野も含む、激動の40年間の議員人生を自らの政局観で切り開き、自民党ナンバー2の権力者にまで上り詰めた政治家だと言えるだろう。
しかし、時代はすでに令和である。国会議員の思惑が絡み合った永田町の駆け引きによる政治ではなく、求められるのは真に国民生活に向き合った政治だ。ザ・昭和の政治家が国会から去ることによって、現代に即した新しい政治を始めることができるのかが、これからの国会議員には問われている。
取材・文/宮原健太
集英社オンライン編集部ニュース班