人材獲得もグローバル化
ここまで柴山氏の話を聞くと、いかに日本がグローバル化の波の中にいるのかがわかった。グローバル化の影響は株式市場だけではなく、あらゆるケースに存在するが、とりわけ柴山氏は“人材獲得”における影響を危惧する。
「私が勤務する京都大学の学生を見ていると、新興企業やテック企業など外資系企業に就職したがる傾向が見られます。その理由は、国内企業と比較して賃金が俄然高いから。外資系コンサルも人気が高く、入社数年で年収1000万円を稼げるケースも珍しくありません。現在、外資系企業と優秀な人材の争奪戦が繰り広げられており、外資系企業に対抗できる待遇を設定したりなどしているグローバル企業は増えてます」
グローバル企業の待遇が大幅に見直されると、国内の格差拡大は避けられないと語る。そして、「いい大学に入っていい会社に就職する」というかつてのロールモデルが再評価され、学歴重視の社会に再び突入するかもしれないことを示唆した。
東京一極集中を解消せよ
最後に柴山氏はグローバル化に影響されない、強い国内経済を作る必要性を主張して、そのための政策を提案する。
「やはり消費が最も活発な現役世代がお金を使いにくい税制になっているため、消費税減税や社会保険料減額は必須だと考えています。国内経済が活性化すれば、グローバル企業も日本市場を意識するようになるでしょう。そこで国内投資をした企業に向けた補助金を出せば、お金が海外に流れることなく、しっかり国内に落ちつくのではないでしょうか。
私としては震災大国の日本において、東京一極集中が進行している現状は不適切と考えています。もし東京都に地震が起きた場合、日本経済は崩壊しかねません。大都市に集まった人口や資本を分散させるため、国内、特に地方に拠点を構える企業を後押しする制度は必要だと思います。そういった生産拠点を国内回帰させる流れを作れば、海外の経済状況に影響されない安定感のある国になっていくでしょう」
現在の株価好調は、日本がいかにグローバル経済に影響されやすい現状にあるかということに警鐘が鳴らされているのかもしれない。株価上昇に浮かれるのではなく、むしろ危機感を持つ必要があるのではないか。
取材・文/望月悠木 写真/shutterstock