「小さくても戦える」日本発の道具の進化

こんな現状に関して、プロゴルファーで解説者のタケ小山氏が分析してくれた。

「体が小さくても強くなれる、その最も大きな理由は、やはりゴルフがパワーのあまり関係ないスポーツになってきたこと。肉体がハードウェアだとすれば、クラブやボールなどの道具はソフトウェア。このソフトウェアが進化したことで、ある程度の力があれば、力のある人と遜色ないレベルまでボールを飛ばせるようになってきました。これが大きいですね。

そして体が小さくてもボールを飛ばせる、戦えるようになったのは、日本のゴルフ産業界が道具を進化させたからです。今では常識になっている樹脂コアのマルチレイヤーボールを開発したり、ドライバーヘッドの素材をステンレスからより強度の高いチタンに変えて大型化したり。こういうここ最近の新しい『原理』や『デザイン』は日本発なんです」

「他のスポーツという逃げ道がなかった」ゴルフで“小柄”な女子プロが活躍できる謎をタケ小山が分析_3
取材に応じるタケ小山氏 撮影/一ノ瀬 伸

確かに、同じように道具を使う球技として野球があるが、ボールやバットの反発力規制によって、ハードウェアである肉体が、その競技の優劣を競う上で大きなウェートを占めているように見える。守備や駆け引きなど、パワー以外の要素もたくさんあるが、投げる・打つという基本的パフォーマンスに関しては、肉体的パワーがものをいうのは否定できないだろう。

例えば、プロ野球の平均年棒ナンバー1、福岡ソフトバンクホークスに在籍する104名の選手の平均身長は180.5cm(2022年1月現在。球団公式HPに基づき算出)。前出の2019年の「国民健康・栄養調査」によれば、20代男性の平均身長は171.5cmで9cmの隔たりがある。野球とゴルフを一概に比較できないが、やはり体は大きいほうがスポーツエリートになりやすいことを雄弁に物語っている。

では、男子ゴルフの2022年シード選手68名の平均身長はどうだろうか。その結果は175.4cmで、20代男性の平均身長を3.9cm上回っている。男女ともに平均よりはやや大きいが、野球選手ほどの突出感はない。

今年の国内男子ツアー競技は8試合が終了(6月8日現在)しているが、うち7戦に勝った日本人選手は全員が170cm未満。先週行われた国内メジャーの「日本ゴルフツアー選手権」と「関西オープン」に勝った比嘉一貴は158cmと、男性としてはだいぶ小柄なのだ。

男女ともに、やはりゴルフはソフトウェアたる道具を使いこなす能力、テクニックやメンタルが問われるスポーツなのだとわかる。