綿密な取材で描き出される芸能界のリアル
――現在連載は「中堅編」に突入しましたが、お二人が好きなエピソードはどこでしょう?
横槍 客観的に作品を楽しんでいる自分が好きなエピソードと、作画が上手くいったという作家として好きなエピソードが結構バラバラなので、ひとつに絞るのは難しいですね……。アカ先生から先の展開を聞かせてもらっているので、この先のエピソードもすごいことになりそうで楽しみにしています!
赤坂 僕は「恋愛リアリティショー編」が好き。ストーリーを構想するときに、こういう芸能界の舞台裏は描きたいっていうエピソードをいくつか思いついたんですけど、そのひとつがその「恋愛リアリティショー編」でした。2.5次元舞台、YouTube、恋愛リアリティー番組はどれも現代ならではのコンテンツで、今だからこそできる「芸能界もの」を描きたかったんです。
横槍 アカ先生はさらっと言うけど、芸能界の物語ってリサーチ不足だとどうしてもリアリティーに欠けて浅くなっちゃうし、その嘘っぽさを読者は絶対に見逃さないわけで。そう思わせないアカ先生の技量・取材力は本当にすごいと思う。
赤坂 あかね(黒川あかね)が誹謗中傷を受けるシーンは、一話丸々使って“リアルさ”だけを追求した。もし本当に炎上したらああいう感じになるっていうのを描いてね。表に出さない人が多いけど、あのシビアさこそ芸能界のリアルだと思う。
――そういった芸能界のリアルな情報はどこから入手しているんですか?
赤坂 「この人に話を聞きたい」って言えば繋いでくれる環境があるので、その人脈を活かして芸能人やYouTuber、子役など色々な人たちに話を聞いてます。「ファンなので取材受けますよ! ご飯行きましょう!」って受け入れてくれることが多くなりましたね。
横槍 アカ先生と私の交友関係が微妙に違うから、取材先が被らないのも丁度いいよね。男女それぞれで聞ける話も変わってくるし、バランスよく情報を取り入れられていると思う。これは今の年齢とキャリアだからできるやり方であって、2人とも初連載だったら今のやり方はできていないと思います。
――「2.5次元舞台編」では、自身の作品がメディア化される漫画家・鮫島アビ子のエピソードがありますが、ご自身の経験が反映されている部分はあるのでしょうか?
赤坂 メディア化されるにあたっての手順は自分たちの経験を取り入れて描きましたが、アビ子の憤りや感想とかは周りから聞いた話を混ぜつつです。ただ本当に実在してもおかしくない人ではありますね。アビ子に限らずですが、取材先が特定されないように複数人から聞いた話を織り交ぜてます。誰か1人を明確にモデル立てしてるわけじゃなくて。
横槍 私もアカ先生もメディア化の際、恵まれた環境で展開してもらっているので、メディア化をマイナスに捉えているように思われちゃって申し訳ないです。ただ、漫画家である私たちが漫画家を描いたら、投影されるのはもう宿命だもんね。
赤坂 僕ら漫画家にとって、芸能界との最初の接点ってメディアミックスの話なんです。やっぱり「アニメ化にそこまで期待しちゃいけない」って言う作家さんや編集さんもいるから、描かないのは嘘だなと思って。
対談<後編>へ続く
コミックス1~7巻発売中。8巻は6月17日(金)発売。1~8巻:定価693円(税込)
©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社
©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・【推しの子】製作委員会
編集協力/ウェッジホールディングス