脳が「信号」を読み間違える

脳と体は無意識のうちにつねに連絡を取り合っている。

肺は脳が指示を出さなくても酸素を吸い込み、二酸化炭素を吐き出す。私たちが無意識のうちに行っている生物学的・化学的プロセスの多くは、体を健康かつ安全に保ち、滞りなく働かせるために、進化の過程でプログラムされたものだ。

脳と体のあいだを行き交う信号は、私たちのエネルギーレベルを大きく左右する。たとえば、「疾病行動」。

疾病行動は、体がウイルスや細菌と戦ったり、外傷を受けたり、体内に炎症サイトカインが放出されたりしているときに起こる。

こうした信号を受けると、脳は「あえて」疲労を引き起こすことを選び、覚醒し、集中して活動するのに必要な神経伝達物質やホルモンの産生を減らす。中央制御装置である脳は、体が休息と回復を必要としていると認識し、活動を抑えようとするのだ。

脳が体からの信号を読み間違え“意図的に疲れた状態”をつくり出してしまう「慢性神経炎症」のメカニズムとは?_2

進化の過程で身につけたこのすばらしい適応力のおかげで、人間の体は病気やケガを克服してきた。ところが、現代においては進化上のズレが生じ、「慢性神経炎症」が脳に誤った信号を送って、私たちをつねに疲れた状態にしている。

もしもあなたが質のよくない食事やストレス、毒素の摂取──あるいはそのいくつか──によって慢性的な炎症を抱えているとしたら、あなたの脳はおそらく、体の回復を目指して意図的に疲れた状態をつくり出している。