「瑠奈は結婚もしたことないし、男大っ嫌いなんさ」
捜査本部は、ホテル周辺の防犯カメラの分析などから父親の修被告も犯行に加わっていたことを炙り出し、犯行前に父娘でノコギリやロープなど、犯行に使用した「復讐グッズ」を購入していたことも判明。
母親も含めて計画段階から一家全員が共謀して一連の犯行を行ったとして強制捜査に踏み切り、Aさんの「頭部」を含めた犯罪の証拠を家宅捜索で多数押収、一家全員を同じ容疑で逮捕していた。
捜査の進展と呼応するように、取材でもAさんの女装愛好家としての「戦略的」な側面が次々に明らかになった。Aさんは特殊な趣味を持つ人たちが集う、すすきのの老舗会員バー「B」では「ともちゃん」の愛称で知られる常連だった。その「B」にAさんが出入りできるように紹介した同好の士は当時、こう証言した。
「最初にAさんと出会ったのは、北海道伊達市の北湯沢にある混浴温泉です。ここは家族連れや普通のカップルも来る川沿いの温泉なのですが、実は我々の“界隈”のなかでも有名なスポットでした。男女カップルや単独で来た男性客が、女性の裸を鑑賞して、双方でその反応を楽しむ文化があったのです」
混浴を覗き見することを趣味人たちは“ワニ”と呼称していたが、そのうちAさんはワニだけでは満足できず、紹介制だった「B」への憧れを語り始める。
そして、前述の同好の士の紹介で出入りできるようになると、若い女性へのアプローチを重ねて、トラブルメーカーとしても知られるようになっていった。これが自らの命を落とすきっかけになったのだが、瑠奈被告の祖父は当時、こう証言していた。
「瑠奈は結婚もしたことないし、男大っ嫌いなんさ。私が知る限り男に対して家族以外に気を許してるのを見たことないからな。そういう特殊な性格を持った子なんだ。そうだよ、瑠奈はレイプされてるんだよ、あの男に。女装で女の格好してたから瑠奈は女だと思ってたの。
それで2人でいいところあるから行こうって言われてラブホテルに入って、入った途端に相手は男になったわけさ。出会ったのはカラオケなのかディスコなのかそういうところだと聞いています」