ジェンダーギャップの描き方

–––ジェンダーギャップを物語に落とし込むのは、バランスが難しそうですね。

本当にあらゆるバランスが難しいですよね。伝統的な男尊女卑の慣習で深い傷を負っている人もいます。私も昔付き合っていた人に「彼女なんだから料理作ってよ」って言われて泣いたことありますし。

私は、常に「自分は正しくない」と思う傾向がありまして。さっきも言ったように「自分もやらかしているかもしれない」という考えが拭えない。だから漫画家としてバシッとした作品はたぶん描けなくて……何か小さなきっかけになるといいなと思って描いています。

《漫画あり》ザ・昭和ハイスペ男が壁にぶち当たる話題作『じゃあ、あんたが作ってみろよ』。漫画家・谷口菜津子が考えるジェンダー描写の難しさ_5
『じゃあ、あんたが作ってみろよ』第1巻より(©︎谷口菜津子/ぶんか社)

勝男は、担当編集さんが九州出身なので、地方出身というところやそれによる文化の違いも描きたいと思い、九州出身という設定にしたのですが、九州の男性全員が“勝男的”な人ではない。九州の方が不快な気持ちにならないように、と常に心懸けています。

そういうこともあって、最初は『男子の家庭科』という仮題だったんですが、もう少しゆるい雰囲気に調整しました。

–––ほんの少し言葉のセレクトを変えるだけで、全然違って見えますね。

X(旧Twitter)にこの漫画をアップしたら、共感してくれる人と怒っている人がいて。そういう諍いを見るとつらい気持ちにはなるんですけれど……話し合いをたくさんすることは大事だと思うんです。

私自身のいたらなかったところは教えてほしい。すぐに作品に落とし込むことは難しいかもしれないですが、考えることから逃げ出したくないです。それはジェンダーの問題だけじゃなくて、若者に対してとか、本当にいろいろな部分。新しい価値観は積極的に受け入れていきたいし、自分も変わっていきたいと思っています。

《漫画あり》ザ・昭和ハイスペ男が壁にぶち当たる話題作『じゃあ、あんたが作ってみろよ』。漫画家・谷口菜津子が考えるジェンダー描写の難しさ_6
『じゃあ、あんたが作ってみろよ』第1巻