クソ男の運命は“破滅”でいいのか
–––2020年には、男性のジェンダーロールに悩まされる作品『男がつらいよ』も描かれています。以前からジェンダー的なトピックに興味があったのでしょうか?
私たちは、いろいろな映画や文学で「この社会を、女としてどうやって生き抜くか」というお手本を見せてもらっていると思うんです。けれど、自分が知らないだけかもしれないんですが、男性が変わりたいと奮闘する作品は、女性のそれと比べるとあまり見ないな、と。
それに、私自身も価値観が変わった気がするんですよね。自分が昔描いた漫画を今読むと「うわ……」って思いますから。
–––私も高校生ぐらいのときは、リップクリームを塗っている男子に「女子力高い」と言っていたなと反省しています。
そういう経験、ありますよね。昔の自分の行ないを振り返ると、反省しかないです。つい最近も、気の合う同世代の男女で飲んでいるときに「あのときの自分はよくなかった」と反省し合う流れになりました。「俺ヤバかったね、ごめん」「いや、私も酷かったよ」って。友人同士で飲みながら「変わっていかなきゃマズイよね」と自分たちの行ないを振り返りました。
–––ここ数年で、これまでのジェンダー観がだいぶ更新されましたよね。
子どものころの家庭科の教科書って覚えていますか? 今は違うかもしれませんが、自分が使っていた教科書は、お母さんがエプロンを着て、お父さんが日曜大工をする……みたいな画像が多かった。
あと家庭科と技術科の授業はあるけれど、なんとなく前者は女の子、後者を男の子が頑張る……みたいな雰囲気もあったような気がします。教室の中でジェンダーロールのイメージが刷り込まれていったなと思うと、根深い問題だなと思います。
–––「そういう価値観を変えなきゃ」と思い始めたのは、いつぐらいからですか?
本当に最近だと思います。Netflixとかで海外ドラマを大量に見るようになったからかなぁ……。
NetflixやHuluなどを通して、世界にはこんなにジェンダーの問題に関する作品があるのかと驚きました。そこに自分がイライラしていたことの答えがすでに描かれていることもあったりして、そういった作品に影響されていると思います。
–––特に影響を受けた作品はありますか?
最近観た中で印象に残っているのは、『マーベラス・ミセス・メイゼル』です。
専業主婦だった女性がコメディアンとしての才能を開花させていく物語で、舞台となっている1950年代末〜1960年代前半って、女性がステージに立つことも、目立つことも歓迎されない時代だったそうです。主人公の夫・ジョールは働きながら趣味でコメディアンとして活動をしているのですが、コメディアンとしてはそれほど上手くいっていない。その理想と現実からの逃避からか秘書と浮気をして、2人は離婚してしまうんです。
–––理想だけが高く、女癖も悪い夫……。
この作品が今まで自分が触れてきたものと違うなと思った点は、妻を蔑ろにして浮気をした夫が破滅していく痛快な物語などでなく、ジョールが元妻に触発されてよい方向に変わろうとしていくところです。妻を蔑ろにして浮気をした夫が破滅していく痛快な展開ではない。勝男を描くうえで、すごく参考になりました。