日本の首相を「不倶戴天の敵」と罵倒してきた金正恩氏が…
党機関紙の労働新聞が1月6日、「被災地の人々が一日も早く地震被害から復旧し、安定した生活を取り戻せるよう祈る」とする全文を2面で報じ、林芳正官房長官も同日の記者会見で電報の存在を認め、次のように語った。
「ご遺族および被害に遭われた方へのお見舞い、被害地域の方々が一日も早く地震被害から立ち直り、安定した生活を取り戻すことを願っているという旨のメッセージが発出されたと承知している。日本政府として感謝している」
ミサイル問題などで緊迫しているかのように見える日朝関係のなか、送られた電報。外交関係がなく、敵対国でもある米国と同盟を結ぶ日本の首相に、金正恩氏が見舞い電報を送ったということで、メディアからの注目を集めることになった。
これまで、1995年の阪神大震災で北朝鮮の姜成山首相(当時)からのメッセージが村山富市首相宛てに送られたことはあったものの、北朝鮮の最高指導者から日本の首相に公にメッセージが送られたケースはなく、金正恩氏が岸田首相に電報を送るのももちろん初めてのことだった。
金正恩氏の電報のなかで、ひと際注目を集めたのは金正恩氏が岸田首相のことを「閣下」と敬称を用いて記していたことだった。
北朝鮮問題に詳しい韓国人ジャーナリストがこう語る。
「これまで日本の首相に対して『不倶戴天の敵』と罵倒してきた金正恩氏が、岸田首相に対して『閣下』という言葉を使ったことには驚きました。これは単なる電報ではない。冷静に分析すると、こうした言葉遣いの変化から北朝鮮側の思惑を読み取ることができる。
例えば金正恩氏は米国のトランプ前大統領に対して当初は『狂った老いぼれ』などと罵倒していましたが、米朝首脳会談を行う際には『閣下』という敬称で呼び始めた。このときは制裁解除などを要求したいという思惑が北側にはあった」
金正恩氏が電報を送り、林官房長官が「感謝する」と答えた今回の一連のやりとりは、外交的には日朝間で何らかのシグナルを送り合っているとみることができる。では、日朝それぞれの思惑とは何なのか?