Crypto Zinja以外に、せきぐちはあるNFTプロジェクトを紹介してくれた。それは東日本大震災の被災地であり、今も復興への道を歩む南相馬市へのチャリティだ。
「今、ウクライナへの支援をNFTを通じて行おうという動きが活発になっていますが、このようなチャリティとNFTはとても相性がいいと思います。国や地域ごとに異なる法定通貨ではなく、イーサリアムという暗号通貨があれば場所にとらわれず相手を支援できる。これは大きなことだと思います」
一方で、せきぐちはNFTをチャリティに活用する上で大きな問題にぶち当たったという。それは、暗号資産の値動きの激しさだ。南相馬市のチャリティイベントを行った際は、イーサリアムの価値が大きく下がっていた時期。「もし価値が上がっている時期にチャリティイベントができれば、もっと貢献できた」とその難しさも口にした。自治体などを巻き込んだイベントは、イーサリアムの価値下落を理由に延期するなどはできない。企業などがNFTを用いてビジネスを展開する上で、クリアすべき課題になるだろう。
お金だけ見ていたら、失敗する
神社やチャリティ、せきぐちは一見するとビジネスから遠く離れた分野でNFTの活用を模索している。何かとお金のことが話題になりがちなNFTにおいて、異色のようにも見える。
しかし、そこにはある真意があった。
「10年以上前からYouTuberとしても活動していますが、お金儲けだけしか考えずにYouTubeに参入した人たちは、ほぼ例外なく失敗して消えています。NFTもお金だけに目を向けている人は、いずれ消えていくでしょう」
NFTがブームになるにつれ、それにまつわる詐欺も増えているという。改ざん不可能で、かつ取引の履歴も全て残るブロックチェーンを活用したNFTでこのようなことが起こるのは何とも皮肉だが、お金の臭いがするところに怪しい人間が群れるのは世の常でもある。
しかし、せきぐちはあくまで一過性のことになるのではないかと見ている。そして、自戒を込めてこう語る。
「近江商人は三方よし(買い手、売り手、世間が利益を享受できる)ですが、私は『七方よし』くらいを意識してNFTのプロジェクトに向き合いたい。それがNFTで成功する条件になるのではないでしょうか」
VRやNFTを巡る動きは日進月歩で進んでいる。かつてGAFAが台頭して、Web2.0と呼ばれる時代が到来したように、近い将来、ブロックチェーン技術などを用いたデータの分散管理が実現される「Web3.0」の時代が訪れるのではないかとの期待が膨らんでいる。一体、Web3.0はどんな時代になるのかーー。1人のアーティストの活動から、その一端が見えてくる。