おやつは遅くとも午後4時までに

そして朝食から4時間後、遅くとも6時間以内に昼食を摂りたい。朝食から3時間経つ頃には体に必要な栄養素の多くが消耗しているという。

「タンパク質を消化する胃は、正午~14時に最も働きます。この時間帯はカロリーが多少高いものを食べても脂肪になりにくい時間帯です。夕方に代謝が高まるので、昼にタンパク質をしっかり摂っているほうが筋肉量のアップにもつながります」(望月氏)

一方で、ここでかけ蕎麦などの「あっさり食」で済ませると、夕食量が増えやすく、血糖値急上昇につながり、太る可能性があるという。トンカツ定食などの揚げ物類でも、ステーキでも、昼はガッツリしたものを食べたほうがいい。

「おやつ」に適した時間もある。昼に活動し夜に眠るような一般的な生活スタイルの人なら、「おやつは14時前後、遅くとも16時まで」という。時計遺伝子の一つで、体内時計を調節している「ビーマル1」が脂肪の蓄積と密接に関係していることを解明した日本大学薬学部の榛葉繁紀教授に話を聞いた。

「ビーマル1の量は一日のうちで増減し、この量が増える時間ほど食べたものが脂肪になりやすいんです。ビーマル1が最も少ない時間帯は昼頃から16時まで。そこから徐々に増えていきます」

22時から深夜2時の間は最も少ない時間帯の数十倍にもなる。夜間の“つまみ食い”にはくれぐれも気をつけよう。

ビーマル1の量の観点から夕食は20時までに済ませるのが理想という。榛葉教授が続ける。
「22時になるとビーマル1が最も多い時間に突入します。ごはんを食べて消化に2時間かかることを考えると、20時台の前半までに済ませるのがいいですね」

また遅い時間ほど血糖値も上がりやすくなる。

食事をすると膵臓からインスリンというホルモンが分泌され、血中の糖を肝臓や筋肉に貯蔵する。インスリンが効かないと血中にいつまでも糖がある、つまり食後血糖値が高い状態が続いてしまう。これが老化や病気の大きな原因になるわけだが、「インスリンは朝のほうが分泌されやすく、効きやすい」(大池氏)のだ。

「ですから同じ食事内容を朝、昼、夕に摂ったとしても、夕食後が最も血糖値が上がってしまいます」

また空腹時が長く続くと、血糖値の急上昇や体内時計の乱れにもつながる。例えば正午に昼ごはんを食べて、夜22時まで何も食べないとなると、絶食時間は10時間。体が夜の10時を“朝”と勘違いする可能性もあるだろう。

絶食時間を10~12時間設けて朝食をしっかり食べるのが理想形。そしてできれば夕食より、朝食や昼食の比率が高いことが望ましい。柴田特任教授の調査によると、日本人は朝食と昼食、夕食量の比率が「2対3対5」の割合の人が多いそうだ。せめて「3対3対4」、理想は「4対3対3」の比率という。

「体が休息状態に入るタイミングの夕食量が増えると、代謝できず太りやすくなります。朝食の量が足りなければ、活動量が高い日中に脳も体もエネルギー切れとなる可能性がある」(柴田特任教授)

朝食量が多ければ朝型に、夕食量が多ければ夜型に傾きやすいことも覚えておこう。必ずしも夜型が悪いわけではないが、朝型のほうがうつ病や不眠のリスクが低下し、肥満になりにくいという報告がある。

また夕食をゼロにするのではなく、消耗した体に栄養素を補給し、疲れた脳や全身の修復に役立たせるために、少なくともタンパク質摂取は意識したい。良質なタンパク源である納豆やヨーグルトは特にお勧めだ。「納豆」のコラムでも述べたが、納豆には血液をサラサラにするナットウキナーゼという酵素が含まれるので、夕食に摂ることで翌朝の血栓予防になる。

イチローの「朝カレー」は医学的に正しかった! 医療ジャーナリストがたどり着いた「食べても老けない時間帯」とは? 起床後1時間以内にタンパク質を_6

「明け方は体内の水分が少なくなるので血栓ができやすく、実際に心筋梗塞や脳卒中の発症率が高いのですが、ナットウキナーゼの効果は8時間以上持続することが複数の研究からわかっています」(望月氏)

ヨーグルトも良質なタンパク源。空腹時はヨーグルトに含まれるカルシウムの吸収率が高くなるため、夕食を終えて1~2時間してから食べるといい。就寝後に成長ホルモンが分泌され、筋肉や骨が作られるがその時の材料に役立つという。

また16時~20時はアルドステロンという塩分を体に蓄えるホルモンの分泌が低下しているため、多少塩分を摂っても体外に排出されやすい。一方で消化に関わる胃や膵臓、肝臓の働きが低下しているため、油分が少なく低カロリー、けれども塩分高めの和食が向いている。