方言にノスタルジーを感じる人には
ささくれだって響く京都の言い回し
「京都人は腹黒く、裏表がある」などと揶揄されながら、さまざまなメディアでおもしろおかしく取りあげられる京都の「いけず文化」。一種のご当地ネタとして長らくいじられ続けてきたが、このいけず文化いじりは一体いつまで続くのか。
国際日本文化研究センター所長・井上章一氏は、次のように語る。
「いけずな言い回しの代表にされる『ぶぶ漬け、どうどすか?』なんて言葉は、すでに京都の日常会話からは絶滅しています。
それでもなお、主に“標準語”を自負されている関東圏の方々から話題にされるのは、彼らが方言を、飾りがなく、素朴で温かいものだと認識しているからではないでしょうか。
方言にノスタルジーを求めるあまり、入り組んだニュアンスが込められている京都のいけずな言葉が余計にささくれだって響くのかもしれません。方言のくせに標準語より複雑な言い回しを使っているという反感は、今後も続くような気がします」
一方で、2023年11月には、そんな京都のいけずな言葉をステッカー化した「裏がある京都人のいけずステッカー」が京都府のお土産ショップで発売された。発案したのは大阪のイベント企画会社と京都のデザイン事務所。11人の京都人も制作に協力したという。
このようなビジネス展開も、京都がいつまでも「いけず」扱いされる要因になっているようだ。
「京都に来た観光客が、もうそろそろ店を出たほうがいいかなというときに『ぶぶ漬けどうどす?』なんてウェイトレスに言われたらおもしろがりますよね。仕事の上でお客さんを喜ばすことは必要ですし、そうしたら、それをもっと商売にしようと考える京都人も出てくるのではないでしょうか。
どうせいつまでも『京都人は腹黒い』と言われ続けるのだから、それを逆手に取ろうと考える人は今後も増えていくかもしれませんね」