阿部さんは大金が入る連絡をうけた直前に音信不通に…

偶然なのか計画的だったのかは想像のしようもないが、内田容疑者の受け答えは極めて自然だったようだ。

「だから信じちゃったんです。それなら連絡が取れないのも仕方ないし、阿部さんは独り身だからしょうがないなと思いました。それで『退院してからであせらなくていいから』と、彼女とやり取りをするようになったんです」

平気でウソを続けた内田容疑者(本人SNSより)
平気でウソを続けた内田容疑者(本人SNSより)

そしてほどなく、内田容疑者から「阿部さんが来週の月曜日に退院することになりました」と連絡があった。

「ああよかったな、と思っていたら、急に阿部さんの新しいLINEのアカウントが出てきたんですよ。『前の携帯がバグを起こしたため、こっちに連絡お願いします』みたいな。それで電話してみたんだけど応答がなく、『体調が悪くてすみませんでした』みたいなLINEが来て、やり取りしているうちに『今、父親が倒れたので岩手の実家に帰っています。10月31日までにはちゃんとします』という内容の連絡が来たんです」

この時点でA氏はさすがに怪しさを感じていたが、内田容疑者は堂々と「演技」を続けた。後の捜査で判明した、内田容疑者が2000万円もの金品を横領していたことを、A氏は「容疑者不詳」として阿部さんから聞いていたようだ。

「阿部さんの自宅には何年も前から女(内田容疑者)が出入りしていて、家事代行サービスみたいなことをしていたそうなんですよ。そのたびに1万円とか5千円とか払って。ところがその女に、自宅で保管していた買取品の貴金属や商品券を頻繁に盗まれて売りさばかれ、被害総額はウン千万円になっていたと阿部さんがグチるわけですよ。

実は私は一番最後にインゴットなど1500万円分を預けていたんですけど、確か9月25日に『明後日に家2軒分ぐらいのお金が返ってくるから助かった』みたいなことを言ってたんですよ」

9月30日に店先に貼られた張り紙、阿部さんは張り紙の最後に署名を残す几帳面な性格だったという(知人提供)
9月30日に店先に貼られた張り紙、阿部さんは張り紙の最後に署名を残す几帳面な性格だったという(知人提供)