赤塚不二夫いわく「たこは現代の妖精だよ」
そうしたキャラクターは天性のものだった。外波山さんも「駆け出しのコメディアンとして浅草のストリップ劇場で前座をやっていたときも、他の芸人がセリフを覚えてコメディをやるなか、たこちゃんはヨダレを垂らして登場するだけで爆笑の渦だった」と、その喜劇の才能に舌を巻く。
ボクサー時代の後遺症で、パンチドランカーの症状を患っていたたこは、記憶障害でセリフ覚えが悪く、師匠宅に住み込んでいた時代は寝小便をすることも頻繁にあった。しかし、彼はピエロとして観客に“笑われていた”わけではなかったとも。
それは彼をテレビの世界で輝かせたテリー伊藤が「彼はパンチドランカーのフリをしていたと思う」とインタビューで答えていることからもわかる。
外波山さんも続ける。
「パンチドランカーの症状は本当にあったと思います。でも、そんな自分を活かすにはどうすればいいのかを賢く考えてたんじゃないかな」
笑いに、そして人々に愛されたこの男は、赤塚不二夫をして「たこは現代の妖精だよ」と言わしめるほどだった。
しかし、人気絶頂のなか、たこは帰らぬ人となる。後編で事故で亡くなったあの日、現場に一緒にいた外波山さんが悲劇の真相を語る。
取材・文/河合桃子 写真提供/外波山文明
集英社オンライン編集部ニュース班