後輩を心配して特攻服で号泣
烈慰羅はこの日ほぼ1日密着取材したが、かなり統制がとれていてメンバー間の関係も良好に見えた。幹部メンバーの一人がなかなか時間通りに来なくて、ゆきみは再三「すみません」と頭を下げに来た。何かトラブルでもあったのだろうか、心配そうなゆきみの表情はかなり険しくなってきた。
そこそこ大きめな公園での取材だったが、メンバーは改造車で来ているし、ゆきみ本人も改造した単車のCBXで来ている。素早く撮影しなければ警察が来て取材を中断せざるをえない場合も十分に想定された。
しばらくしてその幹部が慌てて駆けつけて来た。途中で事故ってしまい、別の友達から借りてきた改造車に乗って来たのだ。遅刻した幹部は安堵したのか、ゆきみの特攻服の胸で号泣していた。ゆきみに連れられ、幹部は遅刻したことに頭を下げに来た。
強く記憶に残っているのは、メンバー全員が揃ったのをゆきみが子供のように喜んでいたことだった。こんな何気ない光景にもゆきみがメンバー思いであると同時にこのチームの大黒柱であることが見て取れた。取材はゆきみのテキパキとした指示でスムーズに終わらせることができた。
「私は本当は強くないんですよ、よく泣くしね、総長やってるけど、みんなあっての総長な
んです」
この謙虚な言葉にもゆきみの人間性の大きさがにじみ出ている。常に慕ってくれるメンバーを気遣っているのだ。
数年後『ティーンズロード』を離れて別の雑誌を手がけていた時、突然ゆきみから連絡があった。大学で勉強していること、他のメンバーもちゃんと大学に通っていることの報告だった。「たまに族車で通学しそうになるのが心配だな」なんてつぶやいていたが、小柄で細いゆきみがキャンパスを颯爽と歩く姿を想像して思わず嬉しくなってしまった。
残念ながらゆきみとは今は連絡がつかないし、その後どんな人生を歩いているのかはわからないけれど、様々な困難に前向きに立ち向かって生きているような気がする……。
文/比嘉健二
#2 公園、トンネルでの乱闘劇、警察との口激バトル…伝説の暴走族雑誌『ティーンズロード』初代編集長が語る「誌面NG秘話」