コオロギ憎けりゃ太郎まで……

なぜコオロギをここまで憎む人がいるのかといえば、まず、その色形がゴキブリに似ていることがあります。あとは新しいものに対する反発もあります。ヴィーガンは昔からネットで反発をくらいがちな存在。

勝手にやる分には構わないのですが、肉を出す店の営業を妨害するような過激な人も時々いるので、そこに似た感覚を持ったのかもしれません。さらに、SDGs文脈へのうさんくささを感じる人もそれなりにいるのでしょう。「上級国民は肉を食べて下級国民は虫を食えってか?」という反発もあります。

「コオロギ憎けりゃ太郎まで…」別に悪いことしているわけでもないのに敷島製パン「コオロギ粉末入りパン」を大炎上させた”日本人の空気感”_4
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そんな中、「ヤマザキ」がツイッターのトレンドに入りました。それを見ると、スーパーの棚でヤマザキパンはよく売れているものの、パスコのパンは売れていないと写真つきで投稿されています。たまたまこうなっただけかもしれませんが、パスコ憎し!の人々にとってはどうでもいい。「コオロギパンを発表したせいだ」「我々の不買運動が効いている」と考え、ますます勢いづきます。

余波もあり、コオロギ食を憎む人々は河野太郎デジタル相が2022年にコオロギを食し「おいしかった」と感想を述べた記事を発掘。晴れて河野氏に対しては「デマ太郎」「ブロック太郎」に続く「コオロギ太郎」というあだ名が誕生し、ツイッターでトレンド入りしたのでした。

「ブロック太郎」の由来は、自身と意見の異なるツイートをする人や、自身を批判する人は軒並み華麗にブロックすることにあります。ワクチンとマスクに疑問を抱いた人はブロックされます。えぇ、私も当然ブロックされています。(2023/03/16)

◇マイナ保険証の不手際で矢面に立たされる河野氏。部下の報告もブロック太郎したからでは? との声があがっているようです。


文/中川淳一郎 写真/shutterstok

#1『「レジ袋は必要ですか?」レジ袋有料化の裏で”大量の産業廃棄物”となる飛沫防止アクリル板…なんかおかしい? 「フィーリング環境活動」』はこちらから

#3『「星」を急激に下げた食べログ運営会社に店に対して3840万円の賠償命令。なぜグルメ雑誌・サイトは信用ならないのか「九州の人はさほど頼まないバリ固ラーメン」』はこちらから

『過剰反応な人たち』 (新潮新書)
中川淳一郎 (著)
「コオロギ憎けりゃ太郎まで…」別に悪いことしているわけでもないのに敷島製パン「コオロギ粉末入りパン」を大炎上させた”日本人の空気感”_5
2023/9/19
¥836
192ページ
ISBN:978-4106110108
人間とはいかに愚かで、「自分だけが正しくて他人は全員無能」と考えているか――。本書は、コロナを含めて折々の社会の空気感を取り上げ、それにまどわされる過剰反応な人たちがどれほど多いのかについて克明に綴った記録だ。著者はコロナ騒動が始まってからの3年余を、「壮大なるパニック実験」だったと振り返る。では、過剰反応な人たちの見本市へようこそ。
「考えることよりリアクションが最優先」
そんな残念な日本人の記録


コンプラ・ポリコレこそ絶対、エコ・SDGsこそ至上価値
節操のないメディア、騒々しいネット世論、不倫はすべて許すまじNG
…そんな関わると面倒くさい、過剰反応な人たちを集めてみました。

【目次】
PARTⅠ それって過剰反応では
ニューノーマルという時の流れ/美観を汚す環境テロへの「?」/ガイドラインゆえの手ごわさ/盆踊りは「邪教のミサ」か/コオロギ憎けりゃ太郎まで…/第何波までやるつもり?/迫害され続けた「祭り」/日本の過保護をガイジンと笑った一夜

PARTⅡ コンプラ全盛時代の違和感
セクハラ香川が謝るべきは/『週刊ポスト』のエロ漫画/アホな校則が国を滅ぼす/ツイッターのIDが凍結されて/オブラートに包まれた言葉/「わたしの川柳コンクール」雑感

PARTⅢ 節操のないメディア
何でも答えてしまうから専門家/死してなお「アベ反対」の人々/野党とともに風見鶏のごとく/「戦犯」たちの屁理屈と炎上騒ぎ/専門バカたちの苦しい言いわけ/一体いつまで「食べログ」信仰/「権威」を無視する人生

PARTⅣ マスクゾンビ国家からの逃亡
感染対策マニアにもううんざり/旅の終わりに/ホタルイカでもマウンティング/バンコクからドヤ顔で現況を/異邦人として生きる心地よさ/不要不急のコロナ対策はなお続く/ホント、「異常な3年間」でした

PARTⅤ ビックリ事件簿
「配達するのが面倒だった」郵便局員/「なぜその発想に至ったか」がわからない/特殊詐欺、「ウマい話」は大抵ハズレ/「計3点で時価2200円」のトホホ感/「サンマ」は日本人だけの楽しみだったのに/「側溝のフタ外され」事故で思い出すこと/大地震の予兆への「またか」感

PARTⅥ 可もなく不可もなし
「検討使」時代の岸田首相/下着2枚を重ね着したころ/お決まりの定型句を疑う/何でもいい、役割があれば…/機内食廃止への妥当な感じ/「辛くない」「次は辛く」の攻防/「異物除去マニア」垂涎のひと時/助っ人ガイジン悲喜こもごも/ご存じですか?「大谷翔平は直江」


PARTⅦ ラクに生きよう
自分なりの「法則」を作る/長文の悪夢にうなされる夜/脳にも休みは必要です/苦痛を正当化するのはやめよう/「昭和オッサンムード」の心地よさ/「生きづらさ」と繊細さ/マウンティングなき世界で 
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