本当の自分を書かなければ死んでしまうほどの覚悟

――大木さんはアイドル時代、期待される自分を演じることへの葛藤があったわけですよね。小説家になった今、作品を評価されたり、あなたはこうなんでしょ?と言われることが、プレッシャーになったりはしませんか?

私は14歳から芸能活動を始めたのですが、大人に嫌われたら生きていけない世界の中で、周りの顔色ばかり気にしてきたんですよね。そしてアイドルになり、感情が追いついていない時も無理に笑顔を作ってみたり、「今日はこの子のキャラを活かすために私はツッコミ役ね」みたいに役割分担を考えたり、そういうことを24時間365日やってきた。

25歳で会社員になったら、今度は一般企業で「結婚はいつなの?」「元アイドルなんでしょ?」「芸能人の友達、紹介してよ」などと言われているうちに、また偽りの自分を演じて疲れてしまって。

そういう負のスパイラルにいたから、28歳の終わりにこの作品を書いているときは、本当の自分を書かなければ死んでしまうというぐらい、追い詰められていたんだと思います。同時に「自分には書く道しかない」と覚悟が決まりました。